看護師研究会代表の坂本玄子先生が、看護や保険の専門家10数人とともに5年がかりで現代語訳を完成させたのが『病家須知(びょうかすち)』だ。著者の平野重誠(じゅうせい)は武家出身で、医師としての技量にも優れていた。しかし生涯、官職につかず、町医者として庶民の治療に専念した。自然治癒力や免疫力を高め、心も健康に保つためには質のよい睡眠が大事だと考え、ここで紹介する就寝前のセルフマッサージ法を提案している。
〈1〉全身の力を抜いてあおむけに寝る。口を開き、息を7回吐く。その際、丹田(おへその約9センチ下)あたりから吐き出すイメージで。
〈2〉口と目をとじて、リラックスした状態で、両手で胸の両脇から下腹まで歌(後述)を21回唱えながら、繰り返しなでる。
〈3〉ももの付け根から太ももの外側に向けて、手の届く所までなでおろす。同じ場所からももの内側に向けてもなでおろす。外と内を、交互に歌を7回唱えながら行う。
〈4〉両手を伸ばして力を抜き、歌を7回唱えながら足の親指を揺り動かす。最後に全身の力を抜き、口を閉じ、鼻で丹田からの深い呼吸を27回行ってから、眠りにつく。
「24時間、せわしなく動き回る現代の私たちにとっても有効です。私もやっていますが、ぐっすり眠れます」と坂本先生。
説明に登場する“歌”とは、万葉集に出てくる田口益人太夫の「いほ原の 清見の崎の 三保の浦の ゆたけき見つつ物思ひもなし」というもの。
「最後の『物思ひもなし』が一種のおまじないのようになっています。覚えにくければ30〜40秒と考えても大丈夫です」