国立がん研究センターが、全国のがん診療連携拠点病院409施設で、’13年の1年間でがんと診断された患者の診療情報を8月3日に発表した。

 

「全登録数は65万人を超え、日本のがん罹患数の約7割にあたります。正確な情報に乏しかった部位別がんの罹患率や病院や地域ごとに集計していた5年生存率の精度を、より高めるきっかけとなります」

 

こう語るのは、医学博士で医学ジャーナリストでもある植田美津恵さん。今回、140ページにおよぶ統計データから浮かび上がった“日本人のがん新常識”を解説してもらった。

 

《新常識1》女性の大腸がんが末期で見つかる理由

通常、大腸がん検査は便の潜血反応検査を行い、陽性がでた場合に内視鏡検査を受ける。ところが――「検便や、肛門からスコープを挿入する内視鏡検査を“恥ずかしい”“つらい”と感じる女性は多いものです。また症状の1つである便秘も女性は日常のことと見逃しがちです」

 

《新常識2》乳がん増加はライフスタイルの変化が影響

「生理ではエストロゲンという女性ホルモンの分泌量が増加しますが、体がエストロゲンにさらされる期間が長ければ長いほど、乳がんリスクが高まります。現在、食生活の欧米化などで初潮が早まり、閉経年齢が上がるなど、生理期間が長くなる傾向に。妊娠期間中は生理が止まりますが、ライフスタイルの変化による未婚率の増加や子供を産まない女性が増えたことで、その機会も少なくなっています」

 

《新常識3》子宮頸がんが肝臓がんを抜き上位に

「子宮頸がん患者の割合はほぼ横ばい状態です。順位逆転は肝臓がん患者が少なくなったことが原因だと思われます。アルコールの大量摂取が肝臓がんと関係していると誤解している人もいますが、原因の8割がB型、C型肝炎ウイルスにあると周知されています。そのため感染者が、がんになる前に肝炎の治療や、肝機能のコントロールをするようになりました」

 

《新常識4》県別のがん発症差はいまだに不明

「気候や食生活は病気の発症に影響します。しかし、気候の特性は、その土地に10〜20年以上住んでいる人を対象に調査するなど詳細な研究をしなければ、相関関係はわかりません。残念ながら、今回の登録では漠然とした傾向しか把握できませんでした」

 

《新常識5》ステージ4患者の薬漬けの実態

「50%以上が、副作用に苦しむ抗がん剤などの薬物療法をしていることがわかりました。しかしステージ4は他臓器にも転移しており、完治は難しい。本来ならがんの苦痛を取り除く緩和ケアに重点をおくはずなのに、『治療なし』はわずか20%ほどしかなく、驚きました。抗がん剤治療でよく言われるのは『がんは小さくなったけど、患者は死んだ』ということ。患者が痛みを取り除いて穏やかな時間を過ごせることを『治療』と考えていても、医療側はがんを小さくすることを『治療』ととらえてしまいがち。こうした意識のズレも顕著に表れました」