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放送中のNHK大河ドラマ『真田丸』では内野聖陽が演じ、伊賀越えの途中に村人からもらったおにぎりに感動するなど、武将らしからぬ姿を見せている徳川家康。彼は、45歳前後まで生きれば大往生といわれた時代、75歳の長寿を全うした。死の直前まで鷹狩りに行く体力があり、今でいう認知症の症状もなかったという。

 

「文献をいろいろと漁るうち、家康公が晩年まで健康を保てた秘密は、食にあったのではないかと考えました。みそや豆料理が好きだったり、漢方医並みの漢方の知識をもっていたり。そして、旬のものをバランスよく食べていたんです」

 

そう話すのは、郷土史研究家で主婦の成澤政江さん(68)。成澤さんは約10年間、研究を重ね、家康が食べたという「家康膳」を完成させた。2年ほど前からは、自宅を月に2回(第2・第4月曜)解放し、この家康膳を振る舞っている(要予約)。最初にいただくのは、ドクダミやビワの葉などを煎じた自家製の「漢方茶」だ。

 

「食前に漢方茶を飲んで、胃腸の調子を整えていたんです。実際に飲まれていたのはこのお茶と少し違い、『八の字』といって、杜仲など、さまざまな漢方を煎じたものです」(成澤さん・以下同)

 

お膳に並ぶ料理は、お茶を除き14品。さらに、梅や薄桃色のツバキ、ふきのとうが飾られていて、箸置きには梅の枝が使われている。

 

「家康公は自然や野山の花が大好きでした。室内でも花を見ながら食べられるよう、こうしてお膳にも花などを飾って食事をしました」

 

料理に使われている食材は、ほとんどが近隣の畑や庭で採れるものだ。成澤さんによれば、当時はまだ今のようなしょうゆはなかったという。そのため、調味料の中心は塩とみそ。そして、家康が幼少期を過ごした駿府(静岡市)の名産であるみかんやだいだいも、調味料として活躍していた。家康の事跡を記した歴史書『武徳編年集成』には、だいだいを使ったレシピが多数、載っているそう。

 

「(お膳にある)このなますも、普通はお酢であえますが、当時を再現して、だいだいを使っています。私もお酢を買わず、果物で代用しているんですよ」

 

お膳にはなかったが、家康は魚や鳥(キジなど)も食べていたという。しかし、圧倒的に野菜が中心だった。権力に任せ、食べたいものはいくらでも手に入ったはずだが……。

 

「豊臣秀吉や織田信長は、あちこちから珍しい食材を取り寄せ、豪華な食を楽しんでいたようです。でも家康公は、地元の食材を好んでいました。また『長命こそ勝ち残りの源』と語り、自ら薬草や野菜を育てていたのです」