「やせ細った体形というわけでもないのに、栄養の問題から不調になることを“新型栄養失調”と呼びます。実は日本人女性の約8割は、この新型栄養失調ではないかと感じています」
こう話すのは、栄養療法に詳しく『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門』(光文社)の著者でもある新宿溝口クリニック院長の溝口徹先生だ。
「新型栄養失調は、外見からは判断できませんが、疲れやすい、朝起きられない、風邪をひきやすい、やる気が出ないなどという症状から、夏バテと勘違いされる方もいるのではと思います。新型栄養失調は、年齢や所得に関係なく現れます」(溝口先生・以下同)
しかし“栄養失調”なんて、現在の飽食日本でありえるのだろうかと疑問に思うが、その最たる原因が「肉不足」であると溝口先生は強調する。
「新型栄養失調の患者さんから食事内容を聞くと、とにかく赤身の肉が足りていません。栄養素でいうとタンパク質、鉄分、ビタミンB群の不足です。『カロリーに気をつけている』『食事のバランスに気をつけている』という人たちが真っ先に控えるのが肉類なのです。特に中年以降で体形を気にするような人にこの傾向が顕著です。こういう人たちに肉を取るよう栄養指導をすると、すぐに体調が改善されるのです」
私たちは5大栄養素といわれる「糖質」「脂質」「タンパク質」「ミネラル」「ビタミン」で体が作られ、機能している。5大栄養素は互いに作用し合いながら、(1)エネルギーをつくる、(2)骨や筋肉など体をつくる、(3)体の機能を調節するといった働きを担っている。タンパク質と脂質は(1)〜(3)すべての働きをし、ビタミン、ミネラルはタンパク質と脂質の吸収を助けつつ、(2)(3)に働き、糖質は(1)のみに働いている。
つまり、糖質は(1)のエネルギーをつくることにしか作用しない。糖質を取ると体内でエネルギーとしてたまるものの、それは体をつくるわけでもないため、過多になると脂肪に変わっていくだけなのである。(2)(3)の働きを助けるタンパク質、ミネラル、ビタミンを取ることこそが必要なのだ。
そして、溝口先生が不足していると訴えるタンパク質、鉄分(ミネラル)、ビタミンB群がすべて補えるのが「赤身の肉」というわけだ。
また、女性にとって、不足しがちなミネラルの1つ、鉄分。女性は生理があるため、常に鉄欠乏状態だ。しかも、閉経後も意識的に鉄分を補充しなければ、鉄欠乏状態を引きずったままになる。
「女性の場合、貧血と診断されないまでも、“隠れ貧血”である場合が多くあります」
貧血の症状には、立ちくらみ、冷え、抜け毛、爪が割れやすくなるなどがある。鉄分といえば、プルーン、ほうれん草、小松菜が思い浮かぶが、実はこれらは「非ヘム鉄」といって吸収の悪い鉄分なのだという。吸収のよい鉄分は「ヘム鉄」といって、非ヘム鉄の5〜10倍の吸収率がある。赤身の肉はヘム鉄を豊富に含んでいるのだ。
「ほかにはレバー、魚、カキなど動物性食品に多く含まれています。また、非ヘム鉄は食材の組み合わせによって吸収が悪くなることがありますが、ヘム鉄にはそれがありません」
さらにビタミンB群は、ビタミン類の中でも突出して不足しているので、積極的に補いたい。
「B群が不足しがちな理由は、糖質過多、ストレス、飲酒などで、体内で大量に消費されてしまうからなんです」
ビタミンB群はタンパク質の吸収を助ける働きもあり、不足していると、体がだるい、肌荒れ、立ちくらみ、風邪をひきやすくなるといった症状が現れる。