「ごぼう音頭で声だそう~、ハイッ!」と、「GOBOU」と手刺繍された茶色い作務衣に赤いハチマキ姿で大きく呼びかけるごぼう先生。彼が考案した「イス体操」は、自主制作のDVDが全国2,000以上の施設に導入されている。
愛知県岡崎市でデイサービスを運営しながら、この体操の指導をしているごぼう先生が話す。
「もともと私は鍼灸師でした。祖母が介護状態と認知症になったことをきっかけに、介護サービスの道へ進みました。当初、施設ではみんなで体を動かせなかったので、誰でもできる健康体操を考案しました」
「イス体操」は、座りながらできる、1回10分程度の10種類の体操。高齢になって思うように体を動かせない人でも、その場を楽しめる体操を目指している。
「あるとき自宅で、祖母といっしょにイス体操をしていたら、たまたま家にいた父も参加したいと言って体を動かし始めたんです。慣れない祖母の介護で家の中がどんよりしていた時期で、しょっちゅうケンカをしていた2人が、体操をしているときは笑顔になる。体操はコミュニケーションになるんだ! と思った瞬間でした」
そこから、“R70(70歳以上推奨)”の健康体操を掲げ、全国の施設をまわるように。人気の秘密は「参加している人たちとの楽しい交流」だと語る。
「表情が変われば動きも変わる。最初から体を上手に動かす必要はありません。まわりの人とその場を楽しむことができれば、体も自然についてきますから」
今年7月にリリースした新しい健康体操『懐かしい音楽でらくらく♪イス体操』は、名曲や盆踊りなど昔からなじみのある音楽を取り入れた。懐かしい音楽は、脳を活性化させるという。
「プロモーションビデオを作るために集まった参加者の最高年齢は102歳のおばあちゃんでした。皆と一緒に声を出し、足踏みをしたそのおばあちゃんの大きな笑顔が印象的でしたね」
体操で流れる『ごぼう音頭』は、先生が作詞・作曲。ボイストレーニングにも通って歌にも挑戦した。「よっこらしょ~どっこいしょ~♪」と曲が流れると、お年寄りたちもどこかで祭りが始まったのかとソワソワした表情に。
「これからの目標は『ごぼう音頭』を引っ提げて、みんなで『紅白歌合戦』に出ることですかね(笑)」