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「昔は『便を作るだけの臓器』と考えられていた大腸ですが、近年、科学や検査法、医学の進歩で、昔の常識がくつがえる発見が次々とされています。大腸の病気はもちろん、全身の健康に大腸の状態が影響していることが最近の研究からわかっています。大腸を整えることはとても大切なのです」

 

大腸の重要性についてこう語るのは、帝京平成大学 健康メディカル学部健康栄養学科で教授を務める松井輝明先生。世間では「腸内フローラ」や「腸活」といった言葉が浸透し、日本人の腸に対する意識は高くなってきているが、実は大腸への理解は思ったほど進んでいないのだ。

 

日本人の大腸がんでの死亡率は男女ともに年々増加している

出典:国立がん研究センターがん対策情報センター「がん登録・統計」

 

上図の通り、年々右肩上がりで増加している日本人の大腸がんでの死亡率。男性は肺、胃に次いで3位、女性はこの50年で6倍も増え1位に。しかし、こうした現状を多くの人々は理解できていないのが実情だ。

 

出典:大腸劣化対策委員会「大腸劣化」に関する意識・実態調査

 

なんと4割以上の女性が最も死亡数が多いがんは乳がんだと思い込んでいるのだ。人間の腸には小腸と大腸の2種類あるが、実は腸の病気と呼ばれるほとんどが大腸からくるもの。つまり、腸活で大切なのは大腸をケアすることであるという意識を持つことがまず重要なのだ。

 

そして大腸を放っておいて腸活をしないと大腸の病気だけでなく、全身の健康にも大きな悪影響を及ぼす可能性がある。松井先生は警鐘を鳴らす。

 

「大腸の状態が悪いと大腸菌O157などの細菌毒素が腸管粘膜のバリヤーを通過して、血液に入り全身に広がることも知られています。また高齢化や自然環境の変化などの影響もありますが、花粉症などのアレルギーやうつ病を抱えた患者さんの腸内環境が悪いという研究報告もあります。さらには、インフルエンザなどの感染症にかかりやすくなる免疫関連や冷え。肥満、肌の乾燥やしわなどの肌トラブルも大腸の不調が影響していることが解ってきました」

 

また健康のために行っている食習慣も大腸劣化を進行させる要因になるという。日本人の大腸劣化に大きな影響を与えている食べ物が実は炭水化物だ。腸内で善玉菌のエサとなる食物繊維と糖質からなる炭水化物だが、戦後進んだ食の欧米化によって摂取量が年々減少。さらには、近年ダイエットに励む人々の間でトレンドとなっている炭水化物を摂取しない“糖質制限”も食物繊維不足を招き、大腸劣化に拍車をかけているというのだ。

 

 

「腸内細菌は“生き物”ですので私たちが食べるモノを栄養源としています。特定の栄養素を制限したり、過剰に摂りすぎたりすると、腸内細菌に届く栄養素が偏ります。食事制限でダイエットするときも、まずはしっかり自身の大腸ケアをすることが大切です」(松井先生)

 

そこで大腸ケアの鍵となるのが、“短鎖脂肪酸”と呼ばれる物質。耳なれない人も多いかもしれないが、抗炎症作用や腸内の悪玉菌の増殖の抑制などといった効果だけでなく、肥満を抑制するダイエット効果もあるといわれるスーパー物質だ。そして短鎖脂肪酸を生み出す重要な役目を担っているのが、ビフィズス菌なのだが、ここでも多くの日本人が“勘違い”しているという。

 

「ビフィズス菌が食物繊維をエサにして大腸のなかで発酵することで、短鎖脂肪酸が作られます。しかし、大腸ケアのお話をすると、『乳酸菌をとっています』とおっしゃる方が多い。乳酸菌も大切な菌ですが、大腸で活躍する菌はじつはビフィズス菌なのですね。まず、乳酸菌とビフィズス菌はまったく違う菌であるということを覚えておいてください」(松井先生)

 

7割の人がビフィズス菌が乳酸菌の1種だと勘違いしているのだ

出典:大腸劣化対策委員会「大腸劣化」に関する意識・実態調査

 

日常生活のなかで大腸ケアをするのにまず大切なのが、普段の食生活を改善することだ。有用な善玉菌そのものを食事から摂取する“補菌”(プロバイオティクス)と腸内に住む善玉菌のエサとなるオリゴ糖・食物繊維を摂取し腸内環境を元気にする“育菌”(プレバイオティクス)。この2つを組み合わせて用いる「シンバイオティクス」は今、大きな注目を集めている。

 

2種類のケアによって大腸をよりよい状態へ

 

しかし、忙しい現代人が今すぐ食生活を大きく変えるのもなかなか難しい話……。そこで入門としておすすめしたいのが、毎日の食事にビフィズス菌を補うことだ。その際のコツについて松井先生はこう語る。

 

「まず大切なのは2週間、毎日同じ種類の菌を摂り続けることです。ビフィズス菌が入っているヨーグルト※やサプリメントなど様々な商品がありますが、商品によって菌の種類が違います。人の腸内細菌叢は指紋と同じく千差万別で同じ腸内細菌叢を持つ人はいません。個人差があり、合う菌、合わない菌があります。さらに、摂った菌が大腸の環境を整えるまでに2週間ほどかかります。短期間で菌の種類、つまりブランドを替えてしまうとせっかくの大腸ケア効果を得ることができなくなってしまうのです。ですので、同じ製品を最低2週間試していただき、その結果を受けて自分に合った製品を摂っていくのが良いでしょう」(松井先生)

 

※市販されているヨーグルトすべてにビフィズス菌が入っているわけではない。店頭で表示をチェックしてください。

 

あなたも大腸ケアで、腸いいカンジになろう!

 

「大腸劣化」対策委員会
https://daicho-rekka.jp/

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