50代女性の10人に1人がかかっているといわれる「骨粗しょう症」は健康な老後にとっての大敵。そんな「骨粗しょう症」を防ぐためにも、生活習慣を見直し、骨密度を地道にコツコツ上げていこうーー。
「骨粗しょう症とは骨密度が70%を下回った状態のことで『骨がスカスカになり、骨折しやすくなる病気』として広く知られています。ところが、病気が進行して背中や腰を骨折すると、約40%の人が5年以内に亡くなるという事実は、意外と知られていません。実は骨粗しょう症は、死にもつながる深刻な病気なのです」
そう話すのは、骨粗しょう症から更年期障害まで、女性医療全般を専門とする太田博明先生。骨粗しょう症は女性がなりやすい病気の一つで、患者は閉経後の女性が多いという。
「骨は皮膚と同じように新陳代謝を繰り返し、約5カ月で新しい骨に生まれ変わります。そして、約5年たつと全身の骨が入れ替わるのです。しかし女性の場合、閉経によって女性ホルモンのバランスが崩れると骨の新陳代謝のリズムが狂い始め、これが骨粗しょう症の引き金となります」
そんな骨粗しょう症だが、生活習慣を変えれば予防はできる。
「加齢による骨密度の低下は避けられませんが、80歳になっても背筋を伸ばして自分の足で元気に歩いている人もいます。骨粗しょう症は、食事や運動など、その人の生活次第で予防できる、生活習慣病なのです」
そこで、太田先生が骨粗しょう症予防のために取り入れたい生活習慣を紹介。
【1】どんなに忙しくても「5時間」は睡眠を取る
「『寝る子は育つ』という言葉があるように、骨は夜寝ている間に作られます。骨の成長は、睡眠中に分泌される成長ホルモンと深い関係があるためです。最低でも、5時間以上は睡眠を取るようにしましょう」(太田先生・以下同)
5時間以下の睡眠は骨密度の低下を招き、骨粗しょう症のリスクを上げるとの研究結果も出ている。
【2】日光浴は日の高い時間帯に15分
骨を作る三大栄養素の1つ、ビタミンD供給には日光浴がもっとも効果的。
「窓越しではなく、必ず外に出て、顔と肘下が直接日光に当たるように。12時前後の日の高い時間帯に15分行うのが理想的。紫外線が弱く、肌の露出が少ない冬季は1時間ほど必要です。日の高い時間帯のウオーキングがおすすめ」
【3】階段は自分の足で「下りる」ように
階段の上り下りはウオーキング以上に骨への刺激になる。
「骨は新陳代謝を経て作り替えられていきますが、状況に応じて骨格、骨の量、質、強度を調整していく特徴があります。つまり、骨に大きな負荷がかかる生活習慣を継続的に行えば、太く丈夫な骨に作り替えられていくのです」
体力のある人は、エレベーターやエスカレーターではなく、積極的に階段を選びたい。
「骨に体重がかかるので、下りのほうが効果があります。骨に負荷がかかるように、しっかりと体重をかけながら階段を下りましょう」
【4】むやみに水分を取りすぎない
骨の材料となるカルシウムは尿とともに排出される。何度も排尿するとカルシウムが排出されてしまうので、必要以上の水分補給は避けよう。
「とくにカフェインは利尿作用が強いうえ、カルシウム吸収を妨げます。コーヒーは1日5杯程度までに抑えて」
お酒の飲みすぎも骨粗しょう症リスクを高めるのでNG。
「食事からのカルシウム摂取量が追いつかず、血液中のカルシウムの濃度が低くなると、それを補充するため骨のカルシウムが血液中に溶け出します。すると、骨を壊す破骨細胞が暴走して、骨粗しょう症のリスクが高まるのです」
運動が苦手な人は、日常生活の中の動きを少し大きくしてみて。
「たとえば、床に散らばっているものを拾い集めるのにも、膝をしっかり曲げてしゃがみ、テキパキと拾ってから立ち上がる。こうするだけでお尻、太もも、ふくらはぎの筋肉や骨を鍛えられます。ふだんの生活の中で、少しでも多く動くよう意識してみましょう」
「女性自身」2020年4月21日号 掲載