「朝ははっきりと手元の文字が見えていたのに、夕方になると見えづらくて……」
最近、多くの読者世代から、こんな悩みが寄せられている。
「自宅でテレワークをする人が増えたせいか、夕方になると『ものが見えにくい』と訴える“夕方老眼”の人が増えています。巣ごもり中に、パソコンやスマホで長時間、動画を見る習慣がついてしまった人にも多く見られる症状です」
そう語るのは、あまきクリニックの味木幸院長。
「ヒトの目を覆う毛様体筋は、輪ゴムのような形の丸い筋肉で、その中にある水晶体という軟らかいレンズを繊維群というひもで引っ張っています。引っ張られた水晶体は薄い状態になっていますが、近くを見ようとすると、毛様体筋が縮んで厚くなります。反対に遠くを見るときは毛様体筋がゆるんで水晶体が薄くなります。このように、目は絶えずピントの調節を繰り返しているのです。この水晶体が硬くなり、ピントを調節する機能が低下することで手元の文字が見えにくくなるというのが“老眼”のメカニズムです」(味木先生・以下同)
水晶体の硬化は、おもに加齢による毛様体筋の衰えが原因と考えられているが、新型コロナウイルスによる“巣ごもり生活”が、その衰えに拍車をかけている。
たとえば、家で過ごす時間の増加に比例して、テレビやスマホを見る時間が長くなったことや、テレワークにより自宅のパソコンで仕事をするようになったことなどが、その原因だ。
「最近よく“スマホ老眼”という言葉を耳にしますが、これは、スマホの長時間使用で緊張状態が続いた毛様体筋がうまく働かなくなり、近くにも遠くにもピントが合わなくなる状態をいいます。医学用語では“仮性近視”といいますが、わたしは“仮性老眼”と呼んでいます」
そして、もうひとつの仮性老眼である“夕方老眼”。朝はすっきり見えていたはずの目が、巣ごもりによる生活の変化で、知らず知らずのうちに酷使され、夕方になると手元の文字が見えにくくなってしまう。文字どおり“夕方限定”の老眼なのだ。
「目を使いすぎて毛様体筋が疲れてくると、自律神経のバランスが崩れ、全身に不調が現れてきます。眼精疲労を改善するために、スキマ時間を活用して血行を促すエクササイズを行うことを勧めています」
そこでご紹介したいのが次に挙げる4つのエクササイズ。顔やまぶたに直接手を触れるのは控えたいこの時期でも、安心してできる内容だ。
■目の筋肉のこりに「目玉ぐるぐる体操」
軽く目を閉じた状態で、眼球を上下左右、左回り、右回りにそれぞれ10回ほど動かす。
「目の周りにある筋肉をまんべんなく動かすことで血行が促され、目の筋肉、毛様体筋のこりも取れてきます」
疲れたと思ったら、いつでもどこでもできる「目玉ぐるぐる体操」。これなら顔やまぶたどころか、どこにも触れる心配なし!
■眼精疲労に「肩後ろまわし体操」
両手の先を肩に置き、後ろまわしで10回まわす。
「眼精疲労を改善するツボと、そのツボに連なる神経が通っている背中から肩、首にかけてをいっぺんにリフレッシュできます」
肩こりの解消にも効果ありで一石二鳥!
■リンパの流れに「腕を斜め後ろ伸ばし体操」
まず右腕を斜め後ろの方向に伸ばして、伸ばした手と逆の方向へあごを向ける。次にあごから手先までが一直線になるように腕を伸ばした状態をキープ。そのまま肩から腕全体を後ろまわしに10回まわしてみよう。反対側も同じ要領でトライ!
「鎖骨の下にある神経のリンパがスムーズに流れることで、目の周りの血流も促進されます。首や肩こりの解消にも効果が期待できますよ」
■視神経の血行に「首ストレッチ」
左手を前頭部の右側に置き、頭をゆっくり倒す。反対側も同様に。次は手を後頭部に置き、頭を前方に倒し、前頭部に手を置いて後方に。さらに左右に首を振る。
「首の中には目の中の神経につながる副交感神経が通っています。こりを取って血行を促しましょう」
姿勢をよくして体操を行うことで、さらに効果がアップするそう。
「女性自身」2020年8月11日 掲載