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「新型コロナ対策で、外出時には必ずマスクを着用する人がほとんどでしょう。マスクの内側は湿度が高く、喉の渇きなどに気づきにくいため、水分を取る回数が減りがち。このため、脱水症状をともなう熱中症を引き起こしやすいことが懸念されています。しかし、熱中症のリスクはさらに“意外”なところにもあります。猛暑下では、高血圧の方が服用する血圧を下げる薬(降圧剤)や頭痛を抑える鎮痛剤など、“いつも飲んでいる薬”にこそリスクが隠れているのです」

 

長かった梅雨があけ、7月30日には高知県で36度、大分県で35度を超えるなど8地点で猛暑日を記録しているこの夏ーー。

 

これから全国的に酷暑が続くことが予想されるなか、日本慢性期医療協会認定の総合診療医で、高知総合リハビリテーション病院院長の小川恭弘さんは冒頭のように警鐘を鳴らす。

 

“降圧剤や鎮痛剤が熱中症を招く”とは、いったいどういうことなのだろうか……? 小川さんは、夏場における降圧剤の服用についてこう話す。

 

「高血圧疾患の患者さんの数は、特に50代を過ぎると増加していきます。日本人の高血圧の基準値は『上(=収縮期血圧)140/下(=拡張期血圧)90』(単位=mmHg)。血圧を下げる薬を服用している方も少なくありません。しかし、夏場は発汗することで血中の水分が減るため、体を巡る血液量は減少しやすい傾向にあります。つまり、汗をかきやすい夏は、おのずと血圧が下がっていることが多いのです。にもかかわらず、降圧剤を“いつも飲んでいる量”飲むことによって、血圧が下がりすぎてしまっている方が多くいます」

 

この「過度の血圧低下」によって、血液中の体液(汗の成分)が血管から外へ出にくくなってしまうのだという。

 

「本来人間は、発汗し、体の熱を放射することで、熱中症にならないように体温調整をしています。しかし、血圧が低い状態では汗が出にくい。結果、体に熱がこもったままですので、熱中症リスクが上昇するんです」

 

高齢の人などが熱中症で救急搬送されるケースもよく報道されるが、降圧剤などが関係していることも多いそう。

 

「降圧剤のなかには利尿作用のある薬(利尿薬)もあります。尿は汗とほとんど同じ成分ですので、利尿薬によってたくさん尿が出れば、血圧は下がっていく。そのほかの降圧剤と同じように、血圧が低い状態が作られることで、汗が出にくくなってしまうのです」

 

高血圧と診断されている人について、「1年じゅう、同じ用量で降圧剤を服用することが最適とは限らない」と小川さんは強調する。

 

「血圧は安定したものではなく、つねに変動しています。血圧を下げすぎることは脳梗塞などのリスクを高めることにもなるため、より注意が必要になってきます。『上140/下90』という高血圧の基準はあくまで“目安”ですから、この数字になったからといってすぐに降圧剤が必要かというと、そうともいえません。毎朝起床時に、安静な状態で血圧を測定すること。そしてそのデータをもとに、降圧剤の正しい服用量について、医師の判断を仰ぐことこそ大切です」

 

「女性自身」2020年8月18日・25日合併号 掲載

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