花が私たちに与えてくれるのは、癒しだけではないようだ。 画像を見る

花を愛でることによって心が癒されたり、リラックスできることを実感する人は多いだろうが、花を使ったフラワーアレンジメントが脳の認知機能にも関係していることは意外と知られていない。

 

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の上級研究員・望月寛子先生は、フラワーアレンジメントが脳の認知機能の改善、向上に役立つという研究結果を発表している。望月先生がフラワーアレンジメントに着目するようになったのは、今から10年ほど前のことだ。

 

「それまで私は学習や記憶機能の研究をしていたのですが、農研機構へ就職して花に接するようになったのを機に、自分で本を見ながらフラワーアレンジメントに挑戦してみたのです。すると、とても難しく感じたのと同時に、フラワーアレンジメントにはパズルと似た要素があることに気づいたのです」(望月先生・以下同)

 

この体験がきっかけとなり、望月先生はフラワーアレンジメントをプラモデルのように、パーツ(花)と組み立てる(花を挿す)順序を示すことで、誰にでもできる手法を考案した。

 

「スポンジのどこに、どの花を、どの順序で挿せばよいのかがわかれば取り組みやすくなると考え、スポンジに〇△□などのマークを入れて、〇にはカーネーション、△には小ギク、□には緑の葉……といったように、決められた場所に決められた順序で花を挿すというマニュアルを作成したのです」

 

プログラム化されたフラワーアレンジメントを、実際に脳に損傷がある高次機能障害の人のリハビリテーションとして実践してもらったところ、認知機能の向上が記憶力テストの結果によって立証された。さらに、その効果はプログラム実施から3カ月が経過してもなお明確に表れていた。

 

「脳は複数の機能を同時進行で使う複雑な働きをします。フラワーアレンジメントは、花が視野に入ることや、非日常的な手先の動きをすること自体新鮮な刺激ですが、それ以外にもさまざまな刺激を脳に与えるようです。どこにどの花を挿すかという情報を覚えて、それを適切に使う脳の働きは『ワーキングメモリ』という日常生活を支える大切な機能を活性化させます」

 

そうした作業を数十分間繰り返して行うことは集中力を養い、脳の前頭葉を刺激することになる。こうした脳の働きは、リハビリ用のプログラムとしてだけでなく、健康な人にとっても脳トレのような働きをするため、認知機能の維持・向上を助けることにもつながるのではないかと望月先生は話す。

 

また、脳の機能のほかに、頭痛や倦怠感などの身体的症状が軽減した、うつ傾向が改善したといった研究結果も出ている。花が私たちに与えてくれるのは、癒しだけではないようだ。

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