「中年以降は、血圧を意識した食生活を送らないと、加齢とともに血圧が高くなる傾向があります」
管理栄養士で女子栄養大学名誉教授の三浦理代先生はそう警鐘を鳴らす。特に女性の場合は、ホルモンバランスが崩れる更年期以降に高血圧になる傾向が著しい。加えて、昨年から続くコロナ禍におけるストレスや運動不足が加わり、私たちの気づかないところで高血圧のリスクは高まっているというから厄介だ。
「血圧が上昇すると、脳卒中や心筋梗塞などのほか、糖尿病や動脈硬化などさまざまな疾患のリスク要因となるため、気をつけてほしいところです。高血圧はそのような危険があるいっぽうで症状がわかりづらいことから別名“サイレントキラー”とも呼ばれ、気にしない人が多いのが問題です。症状が出た段階ではすでに遅いのです。血圧はある程度、食事でコントロールすることが可能です。ふだんの食事習慣から高血圧のリスクを抑えることは大切です」(三浦先生・以下同)
血圧が高くなる最大の要因とされるのが塩分の取りすぎだ。これは塩分を過剰摂取すると、血液の浸透圧を一定に保とうと、血中の水分量が増え、血圧を上げてしまうため。
健康によいと考えられる食習慣の中には、意外と塩分摂取を加速させている“NG習慣”がある。
【1】ランチメニューは和定食を好む
たとえば和食。世界的にもバランスのよい健康食として認められているものの、塩分が多いことが課題でもある。
「和食は発酵食品や野菜、海藻を多用するため、健康食として優秀ですが、煮物などには、味つけの過程で意外と塩分が多めに使われていることがあるのです。つけ合わせの漬け物も同様です。塩分摂取量を考えると、煮汁を飲み干さないなどの配慮が必要です」
【2】夕飯はスーパーの総菜でもう一品足す
栄養バランスを考えて、スーパーやコンビニの総菜を食卓に足そうとすることにも落とし穴が。
「出来合いのお総菜は味つけが濃いめのものが多くあります。パッケージの『栄養成分表示』の中に『食塩相当量』という表示がありますから、そこをチェックして食べる量を調節しましょう。また、こうしたお総菜と一緒に野菜や海藻類を多めに食べるようにすると塩分(ナトリウム)が体から排出されやすくなります」
【3】タンパク質を取るために缶詰を活用する
「缶詰など、加工食品は保存のために塩分がやや多くなっています。やはり事前に塩分量を確認しましょう。食べるときは、スーパーのお総菜同様、野菜や海藻類と一緒に食べたいところです」
【4】乾麺をゆでるときには塩をひとつまみ
「うどんやパスタなどの乾麺には、もともと塩分が練り込んであるものです。これもパッケージの『食塩相当量』を確認してください」
ゆでるときに沸騰したお湯に塩をひとつまみ入れるのが習慣の人もいるだろうが、麺にも塩分が含まれている場合、投入する塩の量は調節したい。麺の塩分量によって、だしやソースの味つけも調節しよう。
【5】朝食のパンは低脂肪バターでヘルシーに
パンにつけるバターだけでなく、パン自体にも意外と塩が使われている。たとえば、食パン6枚切り1枚あたり0.8グラム、ロールパン1個あたり0.4グラムという具合だ。そこにバターをつけると、さらに塩分が加わってしまう。
海外では1日あたり1グラムの減塩で1mmHg血圧が下がるという研究結果が出ている。減塩は確実に降圧につながるのだ。
ヘルシー志向と思って取り入れている習慣にも、血圧上昇を招く思わぬ落とし穴があるもの。含まれる塩分の量をチェックすることを心がけよう。