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「一生のうちに2人に1人はがんになりますが、実はがんのかかりやすさや死亡率で各都道府県には顕著な差があります。この地域差を把握することで、自分が住む地域で当たり前になっている生活習慣を見直したり、がんに対する意識を高めたりすることが重要です」

 

そう語るのは国立がん研究センター全国がん登録室の松田智大室長。’16年にがん患者の情報を各自治体が届け出をして、国が一元で管理する「全国がん登録」が始まって5年になる。

 

「スタート当初は、届け出をする自治体でも、熱心な県とそうでない県があり、小規模な医療機関の数字の漏れもありました。しかし、年々、データの精度が増していて、最新のものは十分に信頼に足るデータとして、実態を捉えていると言っていいでしょう」(松田室長)

 

【女性に多いがん】

〈全がん〉罹患数:42万9,900人/死者数:15万8,900人

 

(1)乳がん 罹患数:9万2,300人/死者数:1万5,500人
(2)大腸がん 罹患数:6万8,600人/死者数:2万5,200人
(3)肺がん 罹患数:4万3,100人/死者数:2万2,300人
(4)胃がん 罹患数:4万1,800人/死者数:1万5,200人
(5)子宮がん 罹患数:2万8,200人/死者数:7,000人
(6)すい臓がん 罹患数:2万0,700人/死者数:1万8,400人

 

※国立がん研究センター「がん罹患数予測」(2020年)と「がん死亡数予測」(2020年)より本誌作成。

 

6月には最新(’18年)の罹患率が報告されたばかり。そこで本誌は、女性に多い6つのがんの10万人あたりのがんの死亡率と罹患率を、都道府県別にベスト5とワースト5を紹介。

 

「罹患率は生活習慣や環境などが反映されます。一方、死亡率はそれに加え、病院へのアクセスのしやすさ、住民の健康に対する意識の高さ、検診で早期発見できているかどうか、再検査の受診率、診断から治療に至る医療体制などで差がつく可能性があります」

 

全部位で女性が“死ににくい県”の1位となったのは滋賀県。

 

「平均寿命も全国トップクラスの滋賀県は亡くなる方が少ないだけではなく、罹患率も9位の低さで、かかりにくい県でもあります。女性の喫煙率が全国2番目に低く、生活習慣の影響はあるようです。がん検診の受診率は全国平均レベルですが、医療機関が充実した京都府にも近く、罹患後にも手厚い治療が受けやすいという理由があるのかもしれません」

 

罹患率がもっとも低かった愛知県は、喫煙率は全国平均以下で、塩分摂取量もかなり低い。さらに県民の99%が、がん診療連携拠点病院まで30分以内にアクセスできるという。

 

一方、罹患率がもっとも高い北海道は、女性の喫煙率が全国一の高さで、さまざまながんの発症リスクを高めているようだ。

 

がんで亡くなりやすいワースト1の青森県。乳がん、すい臓がんで全国最下位となっている。

 

「がん検診の受診率は全国でも平均的か部位によってはそれ以上ですが、喫煙率が全国ワースト2位です。塩分の摂取量も多く、生活習慣の影響で罹患率も高くなっていると考えられます。医療の技術は全国的に差がないといわれていますから、医療機関へのアクセスの悪さ、さらに病院嫌いで症状がないと受診しない傾向にある県民性が発見を遅らせてしまうのでしょう」

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