「一生スタスタ歩きたい」と願い、ウォーキングに取り組む人も多い。だが、「脚力を鍛えることは大切ですが、それだけでは不十分です」と整形外科医の中村格子先生はいう。スタスタ歩くためには脚力だけでなく、肩や体幹の筋力も必要だというのだ。
「肩や体幹の筋肉が衰えると、肩がストンと下に落ち背中が丸まって、バランスがとりづらくなります。また、体幹が安定しないので腕がしっかり振れず、スタスタ颯爽と歩けません。これだとウォーキングしても満足な効果は得られませんし、とぼとぼ歩いている印象で老けて見えます」(中村先生)
では、肩や体幹をどう鍛えるか。あれこれ模索するうち、新体操日本代表チームで吉岡紀子コーチが指導していた体を小刻みに動かすトレーニングを思い出したという。
「小刻み運動なら大きな力がなくても肩と体幹を鍛えられる。一般の方向けに応用できないか、吉岡先生に相談しました」(中村先生)
そうして生まれたのが「ペットボトルフリフリ体操」だ。用意するのは300~330ミリリットルのペットボトルを2本。自分が握りやすいものを探そう。水をそれぞれ半分くらい入れたら、準備はOK!
3つの体操のやり方は次のとおり。ポイントは肩を上げない。よい姿勢を保つ。なにより頑張りすぎず、楽しむこと。
【フリフリ1・たてフリ】肩、体幹、胸に効く!
両足をそろえて立ち、ペットボトルを握り、両ひじを無理のない高さに上げて脇を開く。ペットボトルを胸の前で持って、縦に小刻みに振る。30秒を目指そう。
〈NG〉:振るときに上半身がグラつくと体幹に効かないのでNG。振り幅が大きいと、表層の筋肉ばかり使われるのでNG。脇を締めると、体の前側しか使われなくなるのでNG。
【フリフリ2・よこフリ】肩、体幹、腕に効く!
両足をそろえて立ち、ペットボトルを横にして握り、ひじを曲げて脇を締め、両手を肩の高さに。そのまま、横に小刻みに振る。30秒を目指そう。
〈NG〉:ペットボトルは水平に! 起こしてしまうと効果が半減なのでNG。
【フリフリ3・たいこフリ】肩、体幹、背中、腕に効く!
両足をそろえて立ち、ペットボトルの底を前に向けて持ち、二の腕を肩の高さに上げてひじを曲げ、太鼓をたたくように小刻みに振る。30秒を目指そう。
〈NG〉:肩をすくめて振るのは体幹に効きにくくなるのでNG。左右のペットボトルが離れるのは効果が減るのでNG。
「ひじの高さや前後の位置を変えると、効果の出る筋肉が変わります。今の動きはどの筋肉に効いているかを考えながら、好きな音楽に合わせて楽しんで」(吉岡先生)
フリフリ体操は1回30秒が基本だが、運動不足の人は1回10秒でも結構きつい。
「歯を食いしばって頑張る必要はありません。楽にできる範囲で◎。また“1日○回”などと決めず、目につくところにペットボトルを置いて、気が向いたときにフリフリ。楽しくフリフリしているうちに、少しずつ筋力がアップしてきます」(吉岡先生)
慣れてもっと負荷をかけたい人は、ペットボトルに入れる水を減らして、それでもボトル内を水が対流するように素早くフリフリするとよい。
1~2週間続けた50~60代の人はみな「やせた」という。30代後半の女性は1回やっただけで体重が0.5キロ、体脂肪率が0.5%減少した。腰痛が改善した人も。
「フリフリ体操は、背骨の真上に頭がい骨をのせるよい姿勢でないとむずかしい動きです。だから自然と姿勢がよくなり、若々しくやせて見えます。それに肩甲骨まわりがほぐれるので、肩こりの改善にも効果的です」(中村先生)
大きな筋肉を鍛えるトレーニングは、読者世代には負荷が大きい。
「現役時代から新体操で鍛えていた私も、更年期なのか、肩が上がらない時期がありました。当時は肩を動かすだけで痛みが走りましたが、フリフリ体操を続けて今では元気ピンピンです」(吉岡先生)
フリフリ体操は小さな負荷で、インナーマッスルを少しずつ補強する。だから、何歳からでも大丈夫。無理なく楽しく若々しく、一生スタスタ歩ける体を作ろう。
【PROFILE】
中村格子
Dr.KAKUKOスポーツクリニック院長。日本オリンピック委員会医学サポートスタッフ。著書多数
吉岡紀子
公益財団法人日本体操協会ナショナルチームコーチ。『一生スタスタ歩けるフリフリ体操』共著