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「最近料理の味や香りが薄くなった気がする」。もしかしたら、それは認知症の予兆かもしれない。米国の最新研究で明らかになったにおいと認知機能の関係。鼻を鍛えて認知症と闘おう!

 

■追跡調査でわかった嗅覚と認知機能の関係

 

においがわからなくなると認知症になる――。

 

今年7月、米国シカゴ大学の研究チームが、高齢者515人を追跡調査し、嗅覚の低下が早い人ほど軽度認知障害やアルツハイマー型認知症の発症リスクが高くなることを報告した。日本における嗅覚障害の診察・治療の第一人者である、金沢医科大学耳鼻咽喉科学の三輪高喜教授が解説する。

 

「アルツハイマー型やレビー小体型の認知症では、もの忘れなどの症状が出る前に嗅覚機能が衰えることが指摘されています。嗅覚が低下した人は、認知症の一歩手前といわれる軽度認知障害の発症率が50%も高くなることも明らかになっています。老化に伴うものと違って認知症の前段階の嗅覚低下は『においがしなくなる』ではなく『何のにおいなのかわからない』という症状が最初にあらわれ、のちににおい自体を感じにくくなるのです」

 

そこには嗅覚が、五感のなかでも脳とのつながりがもっとも密接なことが関係している。

 

「視覚や聴覚などが受けた情報は脳の複数の部位を経て中枢に伝わりますが、嗅覚は、においを感じた嗅覚神経から記憶をつかさどる海馬にダイレクトに伝わります。それだけ近い関係にあることから、認知症で起こり始めた脳の病変が、嗅覚に及ぶと考えられています。また何かのにおいを嗅いだ瞬間に、過去の記憶が鮮明によみがえってきたという経験は誰にでもあります。このとき古い記憶を貯蔵する脳の大脳皮質から引き出されます。嗅ぐ力が低下することで、記憶を呼び起こす働きも低下してしまうのです」(三輪先生、以下同)

 

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