「腰痛は、骨盤のゆがみや姿勢の悪さ、運動不足などから起こると考えがちですが、じつは“肛門力の衰え”が根本の原因なんです」
こう話すのは、東京都世田谷区の整体院「せたがや手技均整院」の院長で、開業以来33年間でのべ十数万人に施術してきた整体師の鈴木登士彦さんだ。
日本では40歳以上の約2800万人が腰に痛みを抱えているというから深刻だ。長年、悩んでいる人も多いはず。腰痛になる理由を鈴木さんは次のように説明する。
「腰の安定性を担っているのは、じつはおなかの筋肉。人の上半身は胸と腰は骨組で守られていますが、おなかの部分は、かがんだりひねったりなど柔軟性を持たせるために、5つの骨が重なった腰椎が1本あるだけ。代わりにコアハウスと呼ばれる複数の筋肉で、上下左右から圧をかけて支えています」(鈴木さん・以下同)
おなかには上に横隔膜があり、脇腹には腹横筋、背骨の裏に多裂筋、下部に骨盤底筋がある。これらが収縮することで腹圧が生まれ、体幹をまっすぐに保てるのだ。
■腰痛が起きる原因は骨盤底筋の衰えにあり
「このうち底を支える骨盤底筋の筋力が落ち、その一部である肛門を引き締める筋肉の『肛門括約筋』、つまり“肛門力”が衰えることによって腹圧のバランスが崩れ、腰椎に過度な力がかかることで、腰痛が起こるのです。とくに、第4・第5腰椎の間に腹圧が集中しやすく、腰痛の約8割はこの部位で発生します」
腰椎に負担がかかった状態が続くと、重いものを持つときや顔を洗おうとして前かがみになったときなど、日常のちょっとした動作で、ぎっくり腰になる。
また、腰椎を守るために多裂筋に力が入りすぎてしまい、腰の張りの要因になる。
「肛門力は、肛門を締める動きで鍛えられますが、ふだんほとんどしない動きなので年齢を重ねるごとに筋力は落ちます。それに、女性は出産の関係で骨盤が大きく、柔軟なためにゆがみやすく、腹圧のバランスが崩れやすいことから、男性より肛門力が低下しやすい。なので40代以降の女性は、ほぼ確実に衰えていると考えられます」
また、コロナ禍で外出や運動量が減り、座っている時間が長くなったことで、肛門力の低下が進んでいるという。