■親知らずが生えてこないのは“妊婦の栄養状態”が関係している?
では、親知らずがきちんと生えない人が増えているのはなぜなのだろうか。
代表的な理由としては、食の欧米化に伴い、子どもたちが昔よりも軟らかい食品ばかり食べていることで顎が小さくなって、歯が生えるスペースがなくなったためというもの。
そのほか、妊娠期のお母さんの栄養状態が昔に比べて良くなったことも大きく影響していると幸塚先生は話す。
「生まれたときから栄養が行き届いているので、1つ1つの歯の大きさが大きくなって、1番最後に生えてくる親知らずが生えるような場所がなくなっている。そのため異常な位置に生えたり、歯肉の中に埋まったままで生えてこない歯が増えている……といったことが考えられます」
また、生まれつきの親知らずの有無は、遺伝子の影響が大きいことが分かっている。親知らずの蕾、顎の大きさや形も親から子へと受け継がれていく中で、「親知らずの歯が先天的に欠如している」という状態も生まれるのだ。
親知らずは「第三大臼歯」といって通常必要とされていない歯。生えてこないこと自体には問題ないが、注意が必要なケースもあるという。
「例えば、上顎の親知らずがきちんと生えていても、その歯と噛み合うはずの下顎の親知らずが生えてこない場合。このケースは物を噛む役目が果たせないばかりか、その歯がほかの歯よりも伸びすぎて周りに悪影響を及ぼすことがあります。そのようなときには、虫歯になっていなくても抜歯をすすめますね」
ほかにも、一番奥にある為ハブラシが届かず、それによって虫歯になったり、歯ぐきが腫れたりすることも。中途半端に生えていたり痛みや腫れなどの症状が出るならば専門医に相談したほうがよいだろう。
だんだんと、親知らずが欠如している人の割合は増えていると言われる。いつか“親知らず”という言葉自体が使われなくなる日もやってくるかもしれないーー。
