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「5月11日までの1週間で報告された水ぼうそうの患者数が1医療機関あたりで1.43と国の注意基準を上回ったこと、さらには今後も患者数が増加する見込みがあるため現行制度になって初めて『水ぼうそう注意報』を発令しました」(埼玉県感染対策課)

 

かゆみを伴う発疹が全身に現れる感染症「水ぼうそう(水痘)」が全国的に流行している。

 

感染状況をみても、埼玉県だけでなく、神奈川県、青森県が、国が定めた注意基準(1医療機関あたり1人)を上回っていることが明らかに。

 

1医療機関あたりの全国平均は0.50人で、昨年同時期(0.23人)の2倍以上だ。

 

例年7月中旬まで水ぼうそうの患者数が増加するなか、今年の異常事態を危惧している医療関係者は少なくない。

 

感染症に詳しい長崎大学高度感染症研究センターの森内浩幸センター長が解説する。

 

「2014年10月から、1~3歳の子どもは無料(公費)で受けられるワクチンの定期接種が行われるようになり、水ぼうそうの患者数は激減しました。

 

その一方、そのワクチンの定期接種の対象外で、水ぼうそうにいつかかっても不思議ではない子どもたちが一定数残っていること。

 

さらには定期接種しても、小学校の高学年や中学生ぐらいになりワクチンの効果が弱まったタイミングで感染することも影響していると考えられます。

 

また新型コロナウイルスのパンデミックのため感染対策が徹底されたことで、水ぼうそうに対する集団免疫が落ちたことも患者数が増加した要因のひとつです」

 

10歳未満の子どもがかかりやすい水ぼうそうは「水痘・帯状疱疹ウイルス」に初めて感染することでかかる病気だ。

 

「感染経路は、空気感染や飛沫感染、接触感染など。

 

おもな症状は発熱とまだらに盛り上がった発疹。

 

赤みを帯びた盛り上がり(丘疹)から水ぶくれ(水疱)、膿がたまった状態の発疹(膿疱)を経てかさぶたへと変化していきます。

 

かさぶたになるまで7~10日ほどかかり、その時点で感染力はなくなります。

 

水ぼうそうは自然に軽快することがほとんど。症状が重い場合は抗ウイルス薬を使って治します」(森内先生、以下同)

 

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