ペットブームもすっかり定着した昨今。しかしその裏側で、飼い主の高齢化およびペットの長寿化により、行き場を失うペットが増えている。
「やはり高齢の方は『自分亡き後』のペットの行く末について対策をしておきましょう。シニアに限らず若い世代の方でも、特に『おひとりさま』の場合は同様に、備えておくことが重要です」
こう警鐘を鳴らすのは、日本で唯一のペット相続専門の行政書士で、一般社団法人ファミリーアニマル支援協会代表理事の服部薫さん。ペットを路頭に迷わせないために、飼い主が今からしておくべきことを聞いた。
まずは、自分に何かあったときに、ペットを引き取ってくれる人をあらかじめ探しておくこと。
「『子供がなんとかしてくれる』と思い込むのは危険です。いざとなると、ペット不可のマンション住まいだったり、家族に動物アレルギーの人がいたりと、飼えない状況にあることも少なくないんです。必ず、本人とその家族の了解をとっておきましょう」
ペットに関する情報をまとめておくこともおすすめ。病歴やかかりつけ医院、性格やふだん食べているものなどを詳しくノートに記録しておくと、いざ『引き継ぎ』が発生した際に役立つはずだ。
さらに万全を期すなら、遺言書を作成し、愛犬や愛猫に財産を残すという手立ても。
「ただし、日本の法律ではペットは『物』扱い。直接遺産を相続させることは不可能です。そこで『愛犬ポチの飼育を条件に、○○さんにいくら渡す』という形で、新しい飼い主に財産を分与することになります」
遺言書の末尾にある「付記事項」に、ペットへの思いやなぜこのように財産分与をしたかをできるだけ詳しく書くことがポイントだ。自筆証書遺言よりも、公証役場で公証人が作成する、公正証書遺言のほうがいい。
そして、現段階でもっとも手堅いといえるのが、信託を使ってペットに財産を残すこと。信託とは、そのお金の使用目的を決めて自分の財産を第三者に託すことで、昨年から今年にかけてペットの「その後」に備えられる信託制度が、相次いで発表されている。たとえば、株式会社日本ペットオーナーズクラブの『ペットあんしんケア制度』、NPO法人ペットライフネットの『わんにゃお信託』、ファミリーアニマル支援協会の『ペット信託』など。
「たとえ遺言書を作成しても、実際に遺産だけ受け取って、ろくに世話をしないケースもありました。信託の場合は、基本的にその信託財産が目的に応じて使われるよう管理するシステムがあるので、より安心といえるでしょう」
服部さんの『ペット信託』では、行政書士など法律家が信託監督人となって、財産の管理やペットの飼育が適切におこなわれているかを定期訪問でチェックしているそう。内容もさまざまなので「ご自身や、愛犬、愛猫に合うものを選びましょう」と服部さん。
ペットは私たちの人生に寄り添ってくれる大切なパートナー。自分亡きあとも幸せでいてもらうために、飼い主として最大限、できることを!