「どんな本能でそれをしてくれたのかわからないけど、ビリーのおかげ。奇跡だと思います」
こう語るのは、東京・西麻布で31年「おでん味覚」を営む増田光雄さん(65)。3年前にくも膜下出血で倒れ、集中治療室に入るも1カ月と3週間で退院したという。そこには、自宅で一緒に暮らしている“スピねこ”・ビリー(オス・7歳)の活躍があった。
「ふだんは私の顔をなめて起こしてくれるのに、その日はひっかいて、かんで『起きろ!』って。おかしいなと思い起きたら、トイレから出てきたみっちゃん(光雄さん)が目の前でバタッと倒れたんです」(奥さまの谷野紀子さん)
救急車を呼んでいるときにも、ビリーは光雄さんの横にピタッとくっついていたのだそう。光雄さんいわく、倒れた日は布団から出たことも記憶にないという。
「しつけや世話は家内がやっているけど、朝だけはボクにずっとついてきていたんです。毎日のことだったから、何か異変を感じたのかもしれない」(光雄さん)
担当医からは、「60%命は助からない、20%は寝たきりになるか言語障害が残る」と言われたそうだが、倒れる直前にビリーが紀子さんを起こしてくれたおかげで、後遺症は一切なし。いまも元気においしいおでんを作っている。命を助けたビリーにも自覚があるようで……。
「ボクが入院しているあいだに、家内が『あなたが命を助けた』ってしつこく言ってたんでしょうね。退院してから3年間、毎日朝晩欠かさずビリーにマッサージをさせられています。完全にしもべですね(笑)」(光雄さん)
紀子さんの見えないところで、光雄さんの前でぐるっと回ってアピールするそう。ビリーはとても賢い奇跡のねこだったのでした。