「よかったら、1頭でも2頭でも、連れて帰ってあげられんですかね」。取材中、熊本県動物管理センターの石原貢一所長は何度も何度も、こう繰り返した−−。
今年4月に発生した熊本地震。被災し困難な避難生活を余儀なくされたのは人間だけではない。多くの犬や猫たちもまた、震災により生活が一変していた。
熊本県では最初の震度7を記録した4月14日以降、特別措置として、殺処分を見送り続けている。地震直後の混乱で飼い主と離ればなれになってしまった犬猫が数多く保護されたからだ。
発災以降、県が保護したのは、延べで犬が677頭、猫が974頭(9月16日現在)。犬猫計198頭が飼い主の元に帰っていった。そして県内の動物愛護団体と譲渡会を開くなどして、832頭を新しい飼い主へ譲渡した。しかし、まだまだ引取手は足りない。
本来の収容限度は、犬50頭、猫20頭程度という同センター。殺処分を中止していることもあり、9月16日現在、犬61頭、猫173頭とキャパを大きく上回る数を収容、保護している。県内10カ所の保健所が保護している数も合わせると、その数じつに342頭に上る。
「延べ500人以上のボランティアの方々が精いっぱい、動物たちの世話をしてくれています。それでも、5カ月以上もここにいる犬や猫たちは、ストレスもたまっているはずで、病気も心配なんです」(石原所長・以下同)
幸いにも新しい家族を見つけられた犬や猫がいる一方で、新たに引き取りを希望する人の数は、残念ながら頭打ちの状態だ。
「ふたたび殺処分機を動かすような事態は決して望みません。でも、いつまで現状の形のまま、続けられるかは正直わからないですから……」
ここまで言って石原所長はまた冒頭の言葉を繰り返した。
「1頭でも2頭でもいいので、助けてあげてくれんですかね」
譲渡希望者は「熊本県庁健康危機管理課」までご連絡を。熊本地震の被災犬猫が、新しい家族を探しています。