「定年退職までに、夫婦2人暮らしで確保しておくべき必要額はおよそ3千万円。それに公的年金の受給がプラスされれば、平均的な老後の生活の備えとなるでしょう」と話すのは、生活経済コンサルタントの北見久美子さん。
「無職、高齢の夫婦が一般的に必要とされる毎月の生活費は26万円。現状では夫の厚生年金と妻の国民年金が月に22万円(平均)支給されています。差額は4万円。25年で1200万円にもなります。ほかにも医療費や介護費、家のリフォームなどの費用を合わせると3000万円に近い数字になります」
なんとか現役時代に、のたれ死にしないための3000万円をどう貯めるか。北見さんに、世代・家族構成別のポイントを指南してもらった。
30代、専業主婦と幼稚園の子供2人のケース。子供たちの養育費、お稽古事にメスを入れることが必要だ。幼稚園のママ同士の会話からさまざまな情報が入るが、なんとなく続けていることも少なくないもの。「子供のがんばり度を見極めて辞めるか続けるか決断することも大切」と北見さん。
そして「すべては奥さんが働きに出ることが未来へのカギになります。やはり一家の働き手を増やせるかどうかが分かれ道。具体的な将来の生活像を描いて、子供離れなど、早めに未来へ向けた発想の転換をすることです」(北見さん)
教育熱心な40代のケース。一見貯金できそうだが、やはり子供の教育費に命がけで妻の収入や夫のボーナスまで……という場合も多い。
「子供にお金を使いはたしてしまうパターン。自分たちの生活をしっかり見据え、危機感を持つことが『学費捻出地獄』脱出のカギになります。公立校でも特訓授業のある学校や、私立校のランクを下げ、特待生として入学すると授業料が免除になる学校を選ぶ手もあります」(北見さん)
さらに食費、通信費、保険料の見直しを。「何よりも自分たちの老後の資金作りは、教育費捻出に苦しむなかで心のよりどころになるはずです」と北見さん。節約を続け、子供の自立後は、教育費&ボーナスを貯金に回す。こうすれば3000万円の貯蓄が可能に。
子供のいない50代夫婦のケース。この世代の特徴は、趣味に対する支出が多すぎるという。
「総じて、趣味や外食費が高くなりがちです。ほとんどが10年以内に定年を迎える世代でもあるので、当然貯蓄できる期間も少ない。どれだけ財布の紐を締められるかが、老後の明暗を分けます」(北見さん)
まず大ナタをふるう項目は外食、自動車、レジャー費だという。そして、年を重ねるごとに増えるというのが「交際費です。その代表がお中元、お歳暮や冠婚葬祭の費用。退職後も支出が増え続けるのは厳しいので、見えは禁物です」(北見さん)
広がりすぎた家計の縮小をいかに覚悟できるか、それが成功の秘訣だ。