眠いときや退屈なとき、ついつい出てしまうあくび。しかも、家族や仕事仲間があくびをすると、自分にも伝染してしまう……なんてことはありませんか?
「もしかするとそれは、相手と自分の仲のよさを示すサインかもしれません。イタリアのピサ大学などの研究チームの調査によって、あくびは親しい間柄の人同士ほど、伝染しやすいことが明らかになりました」
そう話すのは、順天堂大学教授の小林弘幸先生。あくびは親族、友人、知人、他人の順に伝染しやすいのだとか。
「さらに、恋人があくびをすると、あくびを返す率が高かったというのです。研究では、脳の感情をつかさどる部分と、あくびの伝染に関わる部分が重なっているとのこと。夫婦間であくびが伝染するかどうかが、愛情のバロメーターになるかもしれませんね」(小林先生・以下同)
では、なぜ私たちはあくびをするのでしょうか? それは、眠いとき、疲れたときに体をリフレッシュさせるため。
「あくびをする際、自然と腕を大きく伸ばすのは、肺を広げて呼吸効率をアップするため。血中の酸素濃度が上がることで、脳だけではなく、全身の倦怠感も改善します。また、深い呼吸は副交感神経の働きも活発に。これによって血圧と脈拍が安定するので、リラックス効果もあるのです」
極端に緊張するとあくびが出るのは、体が自然と、自分を落ち着かせようとしているのだという。
「あくびは脳を目覚めさせる働きもあります。あくびが出やすいのは、脳が覚醒と睡眠の境界から、覚醒に向かうとき。実際にあくびが出た後の脳波を測定すると、覚醒時を表すベータ波が出ていることがわかっています。退屈な会議のときにあくびが止まらないのは、やる気がないのではなく、むしろ『起きなければ!』と頑張っている証なんですね(笑)」
より多くの酸素を血流に取り込み、脳を覚醒させるためにも、口を大きく開け、腕もうんと伸ばすことが、体をリラックスさせるあくびのコツだという。
「職場や家庭で誰かがあくびをしていたら、叱るよりも『頑張っているな』と褒めてあげてください。あくびはかみ殺すよりも積極的にすることで、疲れや眠気が解消されます」