毎週日曜夜の坐禅会には、本堂いっぱいに70人以上が参禅し、2カ月以上先まで「予約が取れない禅寺」と人気を博している東京・谷中の「全生庵(ぜんしょうあん)」。この寺の第7世住職で、著書『座禅のすすめ』もベストセラーになっている平井正修さん(46)に、いま座禅が人気なのはなぜか、聞いてみた。

 

「座禅をしようとする人に共通しているのが、漠然とした不安を抱えていることのように思います。使う道具が便利になりスピードアップした分、のべつ幕なしに“用”が押し寄せてくる。『何もしない時間』が失われ、自分で自分の首をしめている気がします。その象徴の携帯電話やスマホには、いらぬ妄想を促す“機能”も備わっているようです。だからこそ、自分の心を落ち着かせる、座禅のような時間を意識的にとらなければいけない時代になったのかもしれませんね」

 

ただし、座禅は万能の魔法ではない、と平井住職。

 

「座禅とは、ただ座るだけのこと。『本来無一物』という禅の言葉があります。人は何も持たない裸で生まれてきて、死ぬときも何も持たずに還っていく。座禅は、余計なものを捨てて裸の心に戻ることなのです」

 

いつの時代も、禅は不安を抱える人のためにあったという。戦乱を生きた武将たちが心のよりどころとしたのが禅だった。どんな時代でも誰もが孤独と不安を背負って生きているという。

 

「人々はその解決策を必死で求めます。しかし多くの場合、解決策などありません。ならば捨てられるものは捨てる。捨てられないものは、解決しないまま抱えていけばいいのです」

 

そうは言っても、不安や怒りといった感情はなかなかコントロールが難しい。

 

「同じ出来事を経験しても、怒りが爆発する人と、収められる人がいます。その違いは呼吸。長く吐く『呼吸』こそが、禅の呼吸です。座禅により、姿勢を調え、静かに座る時間を持つ。そのとき、長くゆっくりと息を吐いていきましょう」

 

そうすることが、不安やストレスで固くなった心を緩めることにつながっていくのだという。

 

「人生は長いといっても瞬間、瞬間の積み重ねです。不安、苦しみを感じたならば、1回落ち着いて、ちょっと座ってみましょう。そして自分の心の明かりをともしてみてください」