「初詣では、日ごろお世話になっている神様、仏様に今年も無事に新年を迎えられたことを感謝するのが目的。神社でも寺院でも、ふだんからお参りに行く場所であることが重要でしょう。全国的には神社への初詣でが多いですが、関東では寺院へ行く人も多いといわれています」
こう話すのは、寺と神社の旅研究家の吉田さらささん。神社仏閣に出かける際は、事前に少しの“予習”をしておくだけで、神様、仏様の世界が身近になり、お参りがぐっと楽しくなる。初詣でに出かける先にどんな神様、仏様が祭られているか、また、いつの時代のどんな建物があるかなどを調べておこう。
「日本の神様を知るには、『古事記』を読むのが近道です。最近は大人向けのマンガ版もたくさん出ていますので、年末年始の休暇中にでも一度読んでみるといいでしょう。人間よりも人間くさいのでは? と思うほどの神様も登場し、見えない存在ながらも親近感が湧くはずです」(吉田さん)
そこで、初詣でする前に知っておきたい「願いを成就する5人の神様」を紹介。
【オオトシノカミ】お正月の「顔」ともいえる豊かな実りの神様
・代表的な神社:葛木御歳神社(奈良県御所市)
・ご利益:五穀豊穣
五穀豊穣をつかさどり、正月に家々にやってくる「年神様」として知られ、しめ縄や鏡餅などのお正月飾りは、このオオトシノカミを迎え入れるためのもの。「祝い箸」の両端が細くなっているのは、おせち料理をいただく際に、一方は人間、一方はオオトシノカミが使うためだと考えられている。
【コノハナサクヤヒメ】安産をつかさどる類いまれなる美貌の持ち主
・代表的な神社:富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)
・ご利益:安産
類いまれな美貌で、アマテラスオオミカミの孫のニニギノミコトの妻となり3人の皇子を産んだ。たった一夜で皇子を身ごもったために不貞を疑われるが、燃え盛る炎の中で無事に出産し、その疑いを晴らした。木の花が咲き誇るような繁栄を象徴する一方、やがて散るはかなさも象徴している。
【イワナガヒメ】永遠の命を象徴し長寿をもたらしてくれる
・代表的な神社:磐長姫神社(兵庫県尼崎市)
・ご利益:長寿
コノハナサクヤヒメの姉で、岩のような永遠の命を象徴する。妹とともにニニギノミコトに嫁入りしたが、不美人なために父の元に返されてしまう。姉妹をめとることで「永遠の命」と「繁栄」を手にするはずだったニニギノミコトがイワナガヒメを返してしまったことから、人間にも寿命ができたといわれている。
【トヨウケノオオカミ】おいしい食事のためにはるばる伊勢に呼ばれた(!?)
・代表的な神社:伊勢神宮外宮(三重県伊勢市)
・ご利益:食の恵み
アマテラスオオミカミに食事を提供する「食の女神」。雄略天皇の夢枕に立ったアマテラスオオミカミが「私一人では安心して食事ができないので、丹波国にいるトヨウケノオオカミを近くに呼び寄せなさい」と指示したため、丹波から伊勢神宮のそばに移して祭られるようになったという。
【アメノウズメノミコト】色気たっぷりの踊りで芸事の上達をサポート
・代表的な神社:椿岸神社(三重県鈴鹿市)
・ご利益:芸道上達
アマテラスオオミカミが岩戸に隠れたとき、その前で踊りを披露した神様。乳房を出したお色気たっぷりの踊りにやおよろずの神たちが大笑いした逸話は有名。ニニギノミコトの天孫降臨に際しては、先導役を買って出たサルタヒコの正体を確かめたと伝わるが、そのときもやはり乳房を出していたとか。
神社に祭られている神様がすべて『古事記』に登場するとは限らない。なじみのない神様でも、神社の公式ウェブサイトには主祭神にまつわるストーリーや神社の由来が紹介されていることも多いので、出かける前にチェックしておくと◎。