長生きリスクも!「自宅を担保に老後資金」メリットデメリット

最大にして、最後の資産になることの多い自宅。そこに住み続けたまま、お金を調達する便利な制度が普及しているが、じつは大きな落とし穴もあった――。

 

《住み続けたまま、自宅を担保にお金が借りられます》

 

そんなうたい文句の広告を最近よく見かけないだろうか。その正体は、耳慣れない「リバースモーゲージ」と呼ばれる商品の広告だ。いま、メガバンクをはじめ、地方銀行、信託銀行、信金など、全国の金融機関が力を入れているシニア世帯向けの金融商品だ。

 

リバースモーゲージのパイオニア・東京スター銀行の「充実人生」の累計利用者数は’10年は2,000人だったのが、’18年には1万人を突破。右肩上がりの状態が続いている。

 

生活総合情報サイト「All About」のマネーガイドを務めるファイナンシャルプランナー・豊田眞弓さんはこう解説する。

 

「リバースモーゲージとは、持ち家に住み続けながら、自宅を担保にして、一時金や月々の生活費などを借りられる制度です。借り入れ期間中は返済なし、または月々の利息のみを払うだけでいい。返済は本人が他界したときに、不動産を売却して一括清算します」

 

2017年の「家計調査報告」によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)は、実収入が1カ月平均20万9,198円。それに対して、月々の支出は26万3,717円(消費支出23万5,477円+税金・社会保険料等2万8,240円)。月間収支は5万4,519円の不足となる。つまり年金収入だけでは、年間で約65万円も赤字が出る計算だ。

 

「不足分は働くか、預金などを取り崩すしかありません。一方、60代以上の持ち家率は、8割を超えています。預金が底をつきかけているのに、家だけ残っているという例は多くあるのです。かつては、自宅を売却するか、貸し出すことでしか、お金を捻出することができなかったのが、リバースモーゲージの普及で、第三の選択肢が生まれました」(豊田さん・以下同)

 

長年親しんだ生活環境に愛着を持っている人も多いだろう。自宅の売却や貸し出しは、引っ越しを求められるが、リバースモーゲージは住んだまま、“自宅を現金化”できる。シニア世帯にとってはありがたい制度だ。また、住宅ローンの返済に活用することもできる。

 

「繰上げ返済なしで、70歳になっても働きながら住宅ローンを払い続けていた人が、リバースモーゲージを利用して住宅ローンを一括返済。退職して、年金と貯金で生活費を賄う生活が実現できた例もあります」

 

ただし、この制度は誰でも利用できるわけではない。金融機関のリバースモーゲージを利用する場合の条件は、年収120万円以上。原則一戸建てで、評価額2,000万円以上の不動産に限定している銀行も多い。また、銀行は最終的に不動産を売却することで貸出金を回収しようとするので、買い手が付きづらい地方の不動産は対象外であることも多い。

 

一方、民間よりも条件が甘く、低所得世帯を対象にした“公的なリバースモーゲージ”ともいわれる制度がある。全国の社会福祉協議会が実施主体となっている「不動産担保型生活資金」だ。

 

「65歳以上の住民税非課税世帯で、土地の評価額がおおむね1,500万円以上の一戸建てが対象です。ただし、民間と違って、資金の使途は原則生活費に限定されています」

 

老後の大きな助けとなるリバースモーゲージ。だが、デメリットももちろんある。

 

「お金を借りられる上限額は担保評価額の50~70%です。さらに、担保評価額は、市場で流通している不動産価格よりも安いのが一般的。考えていたよりも、借りられるお金が少ないということはよくあります」

 

また、不動産の評価額や金利は定期的に見直されるので、当初の見込みよりも、貸付限度額が下がったり、利率が上がったりすることがありえるということだ。

 

さらに、長生きがリスクになることも……。リバースモーゲージによる借り入れを生活費に充てていた場合、契約時の想定よりも長生きすると、借入金が限度額に到達してしまう。そうなると、以降の借り入れはできなくなるので、生活費を抑えたり、自宅の売却によって、資金を調達する必要に迫られることになる。

 

“人生100年時代”を生き抜くために、自宅の“使い道”を考えよう。

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