「6月から施行される『ふるさと納税』の新ルールは、“お得な”返礼品を禁止するようなものです。まさに『ふるさと納税』は大きな転換期を迎えています」
そう語るのは、年間3,000万円以上を寄付し食料やレジャーなどの多くを返礼品でまかなっているという「ふるさと納税」の達人、金森重樹さん。
’08年に、総務省の肝いりで始まった「ふるさと納税」は、出身地や応援したい自治体に寄付すれば返礼品がもらえることで人気に。’17年度の寄付金額の総額は3,653億円と過去最高を更新。スタートした’08年度の45倍になるまで膨らんだ。
「当初『ふるさと納税』の大きな魅力は還元率、つまり寄付金の返礼割合の高さでした。たとえば1万円の寄付金で5,000円の牛肉が返礼品だった場合、還元率は50%に。なかには100%を超える高還元率の商品もあり、寄付が殺到しました」(金森さん)
それだけ人気を集めている「ふるさと納税」が見直されることになったのはなぜか? 経済紙記者が解説する。
「それぞれの自治体に集まった寄付金は、財政が悪化した地方の活性化に一役買いました。ところが自治体が贈る返礼品の競争が過熱。寄付金が集まりやすい高額な家電製品や高い還元率の商品券を競い合うようにそろえるようになったのです」
たまりかねた総務省は、3月28日に「ふるさと納税」の新ルールを発表。返礼品に対して<寄付金の30%以下><地場産品に限る>と条件を厳しくした。
「この2つの条件を満たし、総務大臣に指定された自治体は6月以降も『ふるさと納税』の制度に参加でき、税制上の優遇措置を受けられますが、指定から外れた自治体は『ふるさと納税』の制度に参加することができません。当然、収入は激減してしまうでしょう」
さらに、自治体を震え上がらせているのが、財政支援のために総務省が配分する地方交付税の存在。
「総務省の要請に従わずに、昨年度360億円を超える寄付金を集めた大阪府泉佐野市、家電やギフト券を返礼品にして約249億円を集めた静岡県小山町など4市町に対して、毎年配分している特別交付税を実質ゼロに。総務省は否定しましたが、“見せしめ”の意味合いが強いといわれています」
そんな総務省の方針に『ふるさと納税』に力を入れてきた自治体はどう思っているのだろうか――。
特産品の海産物で、寄付金額を大幅にアップさせてきた自治体の担当者が小声で言う。
「総務省による指定制度が開始されることになり、返礼品を大幅に見直さざるをえない状況です。そんなタイミングで、私どもの町の名が目立つことは、どうしても避けなければいけません」
生活用品や家電製品などの返礼品をそろえていた別の自治体の担当者は、ため息をつきながら話す。
「寄付金は過疎化に歯止めをかける貴重な財源でした。家電製品の返礼品も、特産品が乏しい町としては苦肉の策。もう大幅な収入減は免れられませんが、6月からの新ルールに従うしかありません」
総務大臣に「社会的にも教育的にも悪影響が大きい」とまで言わしめた前出の泉佐野市は、今月11日、八島弘之副市長が会見を開き、「総務省のやり方は、あまりにも一方的で姑息。今回の法改正が、実質的に『ふるさと納税』制度の終焉につながらないことを祈る」とけん制しながらも、新ルールのふるさと納税に参加することを発表している。私たちにも“おいしい返礼品”は、もうなくなってしまうのだろうか――。
前出の金森さんが語る。
「確かに高い還元率の商品や換金性の高い商品券は少なくなりましたが、新ルールに適応しているかどうか手探り状態で、ギリギリで攻めているようなお値打ちの返礼品も残っている場合もあります。ただ、6月になると出品されなかったり、寄付金額が上がったりする可能性も。今は、そんな“お得すぎる返礼品”をゲットできる最後のチャンスかもしれません」