「自分や夫が大きなケガや、がんなどの病気にかかったとき、『収入が減ってしまう』と不安を抱く人は多いことでしょう。家のローンが残っていたり、子どもの学費が100万円単位でかかったり……。そんな出費が重なる50代でも、年間で100万円以上の『年金』を受け取ることが可能なんです」
こう話すのは、社会保険労務士の石田周平さん。年金っていまは、確か65歳以上にならないと支給されないんじゃ?
「ええ、年齢が高齢になって受け取る年金は『老齢年金』(『厚生年金』と『国民年金』がある)というんですが、病気やケガによって生活や仕事が制限される場合には、『障害年金』というものがあって、20歳以上で条件に該当すれば受けられるんです」(石田さん・以下同)
障害年金とは仕事ができないなどの状態、つまり「介助が必要」になったなどの場合にもらえる年金。
「受け取る権利があるのに、障害年金という制度の名前が広まっていかないのは、仕組みが複雑で手続きが煩雑なうえに、年金事務所の窓口で受け入れられて初めて認められるという、『申請主義』の側面が根強いからです」
制度が複雑でも、多額の年金が受け取れるのが障害年金。いざというときのためにも仕組みを知っておいて損はない。
「病気やケガをして初めて診療を受けた日を『初診日』と呼びますが、その日に国民年金に加入しているのか、厚生年金に加入しているのかで、手続きする障害年金の種類が変わります。自営業や専業主婦は『障害基礎年金』、会社員などの方は『障害厚生年金』(1、2級は障害基礎年金も)を請求することになるんです」
では、気になる『受取額』について、「勤続30年の会社員夫の月収40万円、専業主婦の妻という50代夫婦に、18歳未満の子1人」という「親子3人の世帯」で石田さんにシミュレーションしてもらった。
「まず、国民年金加入者の『障害基礎年金』から。1級で約97万4,000円、2級で約77万9,000円に、それぞれ子どもひとりあたり約22万4,000円がプラスして受け取れます。つまり障害基礎年金1級は『約119万8,000円、2級は約100万3,000円』が受け取れることになります」
次に、会社員などの厚生年金加入者の場合は――。
「個々の加入年数や給料の額などを当てはめる複雑な計算式が必要な『報酬比例の年金額』に関しては、前記の額を『目安の金額』として算出しましょう。1級は、報酬比例の年金額約93万円×1.25+妻の加給年金額約22万4,000円=約138万7,000円が受け取れます。2級は、報酬比例の年金額+妻の加給年金額=『約115万4,000円』が受け取れます。3級は、報酬比例の年金額約93万円が受け取れます」
さらに、厚生年金加入者は、1、2級に限り障害基礎年金も受給の対象となる「2階建て」構造のため、1級で「厚生」「基礎」を合わせて約258万5,000円。2級で同じく約215万7,000円、この条件だと最大で、約260万円という多額の障害年金が受け取れるのだという。
「また、1~3級に該当しない場合は、一時金として『障害手当金』が受け取れる場合があります」
子の障害手当金は、報酬比例の年金額×2が一時金として支給されるため、186万円が受け取れるのだという。