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「『老後資金を2,000万円貯めるなんてムリ!』と思っている人がほとんどですが、そんなことはありません。40代以降から始めても遅くはありません」

 

そう話すのは、『お金のウソ 親の常識は、これからの非常識!』(ダイヤモンド社)など、投資に関する著書を多数出版し“積み立て王子”の異名をとるセゾン投信社長の中野晴啓さん。中野さんは、“年金2,000万円不足問題”で話題を集めた金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の委員のひとりでもある。

 

「しかし、いまからコツコツ貯金をしていても、0.01%という低金利では、一向にお金は増えません。そこで、私がおすすめするのが、『つみたてNISA』を利用した、長期の積立投資です」(中野さん・以下同)

 

つみたてNISAとは、’18年からスタートした金融庁お墨付きの投資制度。さまざまな資産に大勢の投資家から少しずつ資金を集めて分散投資する、投資信託164本が投資対象になっている(7月22日現在)。

 

そのなかから商品を選び、扱っている金融機関につみたてNISA口座を開き、定期的に資産を積み立てていく。口座は1カ所にしか開くことはできないが、複数の商品を購入することは可能。つみたてNISAの最大のメリットは、得た利益に対し、最長で20年間は、通常かかる約20%の税金が、非課税になるという点だ(非課税投資枠は年40万円が上限)。

 

「通常は、10万円利益が出たら、2万円を税金として払わなければなりませんが、つみたてNISAなら支払わなくていい。フルに非課税投資枠を利用すれば、45歳から65歳までの20年で、約1,000万円増やすことも可能です」

 

しかし、「万が一、損をしたら」と思うと、一歩を踏み出せない人も多いはず。そこで、積み立て王子の中野さんに、超初心者でも、安全に老後資金を増やすコツと、つみたてNISAからおすすめの投資商品を教えてもらった。

 

「債券や株など、資産を分散し、国内外の市場にバランスよく投資する必要があります。そうすると、ひとつが値下がりしてもほかでカバーでき、損失が少なくてすむのです」

 

そして、さらに重要なのが、“長期”で投資すること。

 

「世界経済は、毎年少しずつ、成長しています。ですから、短い期間で見れば、値下がりして損をしたように思えても、長期間、分散投資を続けていれば、元本割れする可能性は、きわめて低くなります。金融庁作成の資料でも、保有期間が5年であれば元本割れするケースもありますが、保有期間が20年になると、元本割れはゼロ。長期になればなるほど元本割れのリスクが少なくなります。じつは90%近くの投資家が平均2~6%の年率でお金を増やしているんです。少なくとも15年。できるだけ20年以上は続けてもらいたいですね」

 

さらに、毎月決まった額だけ積立投資をする設定にしておくことで、「株価が値下がりしたときに、おそろしくなって売却してしまう」というリスクを回避できる。

 

「また、月々で一定額を積み立てると、株価が安いときには購入できる口数が多くなり、高いときには少なくなります。すると、長期的に見た場合、株価が上がれば、トータルで同じ金額を投資していても、一気に購入するより、積み立てのほうが多くの口数を保有できます。そのぶん利益も大きくなるんです」

 

このような、「分散・長期・積み立て」という3つの原則に当てはまっているつみたてNISAを利用すれば、元本割れのリスクを極力少なくでき、45歳からでも、年金だけでは足りない老後の資金を作ることができる。

 

つみたてNISAの場合、非課税投資枠を月々に換算すると、3万3,000円だ。

 

「45歳から、利回り7%で毎月3万3,000円ずつ積立した場合、65歳までの20年間で、約1,700万円になります。元本は約792万円ですから、普通に貯金しているより約1,000万円も、お金が増える計算です」

 

金融広報中央委員会が’18年に調査した結果では、60代の平均預貯金額が987万円(金融資産を保有していない世帯も含む)。この預貯金と合わせると、65歳までに、合計約2,700万円の老後資金を作ることも夢ではない。

 

「つみたてNISAの投資期間は、’18~’37年までの20年間という期限付きですが、今後は期限が撤廃されるよう、税制改正の要望を続けています。途中で必要な額をいつでも取り崩すこともできますし、元気で働ける間は、70歳や80歳になってもできる範囲で投資を続けることが可能なのです」

 

始める前にもうひとつ注意すべきことがあると、中野さんが警鐘を鳴らす。

 

「いきなり金融機関の窓口に行って『どんな商品を買ったらいいでしょうか』なんて相談しないでください。窓口で相談すると、運用手数料が高かったり、売れ行きの芳しくない商品を勧められることもありえます。窓口に行って購入するにしても、まずは、自分で商品を決めてからにしましょう」

 

つみたてNISAを選ぶときの選択基準は次のとおり。

 

(1)国際分散投資:投資先を世界に分散。集中させないことでリスクを回避し、世界経済の成長に乗る
(2)日本株の比率は3分の1以下:1の理由と同じ
(3)日本株が入っているもの:投資先を集中させないことと同じ意味で、ある程度は分散する必要がある
(4)為替ヘッジはなし:為替リスクの回避をしていないもの。長期で国際分散投資をしているので為替リスクが少ないと考えられる
(5)純資産総額が50億円以上のもの:投資運用会社の都合で運用が中止になることがある。純資産総額が50億円以上あればそのリスクが少ないと考えられる
(6)ターゲットイヤーファンドは外す:高齢になったらリスクが少ない投資先に変更するターゲットイヤーファンドは、長期投資、高齢化社会にはいらない

 

では、実際に、どんな商品を選べばいいのか。積み立て王子中野さんが厳選する7本を紹介(データは’19年1月16日現在のもの。内容作成は編集部による)。

 

■セゾン投信「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」

純資産残高:1,615億8,000万円/運用管理費用:0.6±0.02%/信託財産留保額:0.1%/設定日:’17年3月15日

純資産高もグンを抜いて高く、このファンド1本で世界中に投資できる。株式と債券の比率は50%ずつ。株式100%のファンドに比べて値動きは比較的穏やか。購入先はセゾン投資の直販か、ゆうちょダイレクトほか。

 

■セゾン投信「セゾン資産形成の達人ファンド」

純資産残高:638億8,000万円/運用管理費用:1.35±0.2%/信託財産留保額:0.1%/設定日:’17年3月15日

市場平均を上回る結果を目指す積極的な運用を行う。日本では数少ない本格的な国際分散型アクティブファンドで、投資関連の賞で何度も表彰されている。購入先はセゾン信託の直販か、ゆうちょダイレクトほか。

 

■三井住友トラスト・アセットマネジメント「世界経済インデックスファンド」

純資産残高:576億7,000万円/運用管理費用:0.54%/信託財産留保額:0.1%/設定日:’09年1月16日

世界経済の成長をとらえることを目的に6本のインデックスファンドで構成。ただし、新興国市場の投資比率がほかより高めに設定されているので、変動幅が高めになる可能性も。購入先はSBI証券、楽天証券ほか。

 

■野村アセットマネジメント「のむラップ・ファンド」(積極型)

純資産残高:244億9,000万円/運用管理費用:1.4904%/信託財産留保額:0.3%/設定日:’10年3月15日

リスクの低い「保守型」、リスクが中くらいの「やや保守型」、リスクは高めだが大きなリターンも期待できる「積極型」などのファンドの1つ。信託報酬はインデックスファンドより高め。購入先はSBI証券、楽天証券ほか。

 

■三菱UFJ国際投信「eMAXIS Slimバランス」(8資産均等型)

純資産残高:196億2,000万円/運用管理費用:0.17172%/信託財産留保額:なし/設定日:’17年9月29日

低コストが魅力のインデックスファンド、長期投資に適している。国内外の株や債券、不動産に投資する“REIT”も含まれ、8資産すべてが12.5%ずつの投資を基本としている。購入先はSBI証券、楽天証券など。

 

■楽天投信投資顧問「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」

純資産残高:161億9,000万円/運用管理費用:0.2296%/信託財産留保額:なし/設定日:’17年9月29日

米国や欧州、日本などの先進国、中国やインドなど新興国の株式も含めると、計800銘柄以上の世界中の株式に分散投資している。債券が入っていないため、やや値動きが大きくなる傾向に。購入先はSBI証券、楽天証券ほか。

 

■大和投資信託「iFree 8資産バランス」

純資産残高:111億1,000万円/運用管理費用:0.2376%/信託財産留保額:なし/設定日:’16年9月8日

国内外の株式、債券、不動産投信など均等に投資されるのでコストも安いインデックスファンド。純資産総額も100億円程度だが、長期投資に耐えられるとみられる。購入先はSBI証券、楽天証券ほか。

 

「『つみたてNISAを選ぶときの選択基準』に沿って選んだものです。ポイントは、国内外の株式や債券などがバランスよく組み込まれているか。“純資産残高”が50億円以上あるかなどです」

 

なかでも重要なのは、投資の規模を表す“純資産残高”だ。

 

「純資産残高が少ないと、途中で運用を中止されてしまうこともありえます。そうなると、長期でお金を増やせません」

 

投資信託の商品をこうした条件でふるいにかけると7~8本しか残らないという。

 

「自社商品が2本入っているので宣伝だと思われそうですが、理想的な商品がなかったので、自社で作ったという経緯があります」

 

最後に、中野さんは、お金を増やすほっとも大切なコツを、こう語った。

 

「手続きなどを面倒くさがらないで、一日も早く始めること。それこそが、確実に資産形成する秘訣です」

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