「片づけとは、物を動かしたり、元に戻したり、並べ替えたりすることを指しますが、脳が物事を処理する能力とほぼ同じ働きです。技術の発展に伴い、私たちの生活はどんどん便利になりましたが、一方で、生活がパターン化し、脳の使われる部分が限定され、使われなくなった部分は衰えています。その結果、一人ひとりの処理能力のクセ(得手不得手)が、片づけにも影響しているのです」
脳内科医の加藤俊徳先生はこう話す。著書『部屋も頭もスッキリする! 片づけ脳』(自由国民社)の中では、脳の持つ働きを部位別に明確にし、8つの脳タイプに分類している。ここではそのうち「感情系」脳をピックアップ。「感情系」脳がうまく使えていないとなぜ部屋を片づけられないのか、さらにはそのトレーニング法も紹介。まずは、次のチェックリストを。多くチェックがついていたら、あなたがきたえるべきは「感情系」脳だ。
□テレビを見ていて泣いたり笑ったりすることが減ってきた
□人が話すことに共感できない
□パートナーや家族の顔色を気にしすぎる
□急に気が変わることが増えた
□家の倉庫や押入れの雑貨を見ても昔がよみがえってこない
感情系脳は喜怒哀楽をつかさどる部分で、日常が楽しくなかったり、思い出の品を見ても何も感じなくなったら要注意。片づけは「自分がどうしたいか=どんな部屋に住みたいか」が明確でないと、うまくできないからだ。また、症状が進行すると、「汚ない」とも思わなくなり、「片づいていない」ことに気づかなくなる。
トレーニング法は次のとおり。
■ご当地や旬のものを食べる
旬の食材や、出先でご当地ものを食べると、特別な気持ちになり、食事をよりおいしく感じる。これが感動となり、感性を育むことにもなる。また、気持ちのいい体験をすると汚れに敏感になり、片づけにもよい影響が期待できる。
■花を生ける
感情をきたえるトレーニングのひとつに「花をめでること」がある。無機質な空間に有機物がひとつあるだけでも、感性は育まれる。「こんな部屋にしたい」といった感情を芽生えさせるのに、花を眺めることは有効。
■音楽をかけて片づけをする
感情系脳を育てるには「楽しい!」と思えることが大切。楽しければ自然と体が動き、「もっとやりたい」と感じるはず。自分の好きな音楽をかけ、一緒に歌ったり、音楽のリズムにのりながら片づけるとスムーズに事が運ぶ。
■写真を選んで部屋に飾る
楽しかった記憶は、当時の写真を見るとよみがえるもの。「楽しかった」「うれしかった」という感情のゆさぶりが、感情系脳を活性化させる。いい思い出の周辺はきれいにしておきたい気持ちもわいて、“片づけ脳”が育つ。
■ものまねをする
ものまねは、人を観察するということ。その人の性格や個性を思い浮かべることで、感情系脳はきたえられる。また、人を見て「誰かに似ている」と思ったとき、それが誰なのか考え想像する行為も、感情を豊かにしてくれる。