この夏立て続けに起きた、あおり運転による悲惨な事件。私たちが驚かされたのは、その危険性だけでなく、あおった側の多くが「自分は悪くない、悪いのはあおられる原因をつくった側だ」と主張していたことだった。裁判を有利にするため無理にでも自己の正当性を訴えているのではなく、彼らは本当にそう信じて発信しているのだ。
「実生活においてもこのような人は増えているように感じます。非を認めず責任転嫁に走るため、より大きな、不必要なトラブルに発展するケースも」と、心理カウンセラーの宮本章太郎さんも“私は悪くない症候群”と呼ばれる人たちの急増を危惧している。彼らに翻弄された2人のケースを紹介。
【ケース1】PTAの会合に遅刻してきた揚げ句「忙しい日に設定する人が悪い!」と逆ギレ。本当に困っています(Aさん・42歳・会社員・既婚)
PTAのメンバーCさんに、ほとほと手を焼いています。先日も会合に遅刻してきた彼女に、「遅れるなら連絡くれればよかったのに」と言ったとたん、「連絡したところで早く来られるわけじゃないでしょう? 仕事でトラブルがあってそれどころじゃなかったんです。それでも急いで来たのに、ひどい言い草!」と、ものすごいけんまくでまくしたてられました。
さらに「わざわざ金曜にやる必要あります? みんな忙しい曜日なのに。誰がこの日にしたいと言いだしたんでしたっけ? もう少し考えてくださいよ!」と、そもそもの日程にまで難癖をつけてくる始末。自分も合意したはずなのに、今さらなんなのでしょう。
そのうえ、みんなで分担した作業をCさんだけやってこなかったんです。でも謝るどころか、「だって私、こういうPC作業苦手なんです。できないと言おうとしたのに、言えない雰囲気だったから。最初から事務職のAさんがやると言ってくれればすむ話なのに。ひどくないですか?」と……。もうあきれて脱力してしまいました。
でも結局、声の大きいCさんに圧倒され、彼女の悪行はなかったことになってしまうんです。あー、思い出すたびモヤモヤする!
【ケース2】強気な開き直りをする同僚や突然、激高するピアノ教師……“謝ったら死んでしまう”病なの?(Bさん・41歳・パート・既婚)
派遣社員のMさんは、配属されて数カ月たつというのにまったく仕事を覚えません。ミスしても「だって、ちゃんと教えてくれないから! 私が悪いんですか!?」と超強気な開き直りぶり。こっちは何度も教えたのに……。
仕事ができないくせに、営業さんがもらってきたお菓子は食べる食べる! 見かねて「まだ食べていない人もいるから、残しておいてね」といったら、「いちいち数えているなんてコワ〜い! まさに“おつぼねあるある”ですね! Bさんヒマすぎ!」ですって。12個入りを5つも食べておいてこれですよ。
長女が通うピアノ教室の先生も同類かもしれません。先日、「娘が合唱コンクールの伴奏者に選ばれなかったので、次こそはと張り切っています。今後もよろしくお願いします」と挨拶したとたん、顔を真っ赤にして、「それ、私のせいということですか!? 私はちゃんと指導しています! 娘さんが上達しないのは、ろくに練習もせず、お母さんも家でちゃんと見てあげていないからですよね? イヤならやめてもいいんですよ?」と激高されました。
私、なぜここまで言われなきゃいけないんでしょう。この2人、“謝ったら死んでしまう”病にかかっているとしか思えません。
では、私たちはどう対応すべきなのだろうか。宮本さんによると、具体的な行動(やめろ、○○しろ)を求めたり、責め立てたりする言葉は、相手をヒートアップさせてしまうことになるという。
「売り言葉に買い言葉の事態を避けるためにも、不本意かもしれませんが極力感情を加えず、今起こっていることを淡々と伝えるようにしましょう。相手に“自分は攻撃された”と思わせない言葉選びが大切です」(宮本さん)