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今月17日で阪神・淡路大震災から25年。最大震度7、死者6,000人超の巨大地震は、高速道路をなぎ倒し町を焼き尽くしたが、ボランティア活動が起こり、地震保険が広がるきっかけになった。そんな地震保険の現状について、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。

 

■地震保険で自宅を再建するのは困難

 

地震保険の創設は54年前の’66年。国家公務員の大学卒初任給が約2万円のころ、地震保険の保険料は年6,000〜5万円(保険金1,000万円あたり・以下同)と高額で、補償対象は全損だけ。よくできた保険とはいえず、浸透していませんでした(損害保険料率算出機構)。

 

それから改訂を重ね、補償の範囲も広がりました。契約件数も阪神・淡路大震災前’94年度の400万件弱から、翌’95年度には約518件。’18年度は約1,901万件でした(日本損害保険協会・以下同)。

 

保険は契約者が増えると保険料は下がります。今の保険料は居住地や建物の構造によりますが、年7,100〜3万8,900円。当初と比べると、かなり手ごろといえます。

 

ただ、最近は地震が巨大化して、保険会社が支払う保険金も、東日本大震災では総額1兆2,833億円と莫大です。また地震が頻発していて、保険料は上昇傾向です。

 

今後30年間に、南海トラフ地震が起きる確率は80%といわれ、保険加入を考える方も多いでしょう。まずは、補償内容などを理解して。

 

というのも地震保険では自宅を再建できるほどの保険金は出ません。地震保険は火災保険に付帯して加入しますが、保険金額は火災保険の30〜50%に制限されています。火災保険が2,000万円なら、地震保険は最大1,000万円です。

 

さらに、被災し全損と判断されたら保険金は満額支払われますが、全損判定は熊本地震の際の熊本県で、契約者の4.1%とごくわずか。一部損の判定だと保険金額の5%ですから、1,000万円の地震保険でも支払われるのは50万円です。

 

地震保険は、自宅の再建費用ではなく、当座の生活費を補償するものと考えたほうがよいでしょう。地震保険の加入は、払う保険料、被災した時に受け取れる保険金と、わが家の住まいや貯蓄額などを考え合わせて決めてください。

 

たとえば、「被災後の生活費は貯蓄でまかなえるから加入しない」という判断もアリだと思います。

 

賃貸の方が加入するなら、家財だけの補償です。保険料は高い、たとえば東京のマンション住まいで、家財に300万円の地震保険をかけた場合、保険料は年7,500円。大きな負担ではないでしょう。

 

また、持ち家で住宅ローンが終わった方は、地震保険は家の修理費用というより、被災後の生活を支えるものだと考えましょう。

 

悩ましいのは、住宅ローンを返済中の方。被災して万が一家をなくしても、住宅ローンは残るからです。国には一定の資金を手元に残して、できるだけ返済すれば残りのローンを減額・免除してくれる「被災ローンの減免制度」があります。制度の活用も含めて、地震への備えを考えてください。

 

なにより、地震保険に加入するなら続けること。解約後に被災したら、泣くに泣けませんよ。

 

「女性自身」2020年1月28日号 掲載

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