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新型コロナウイルスによる緊急事態宣言も解除され、日常が少し戻りつつある。だが、経済への影響は深刻で、困窮する人がますます増えるのではとの心配の声も。

 

特に、私たちの生活で問題となるのが住宅ローンだ。住宅ローンサービスを行う株式会社MFSが、住宅ローンを返済中の方に聞いたアンケートによると、「返済が苦しい」と答えた人は39.6%。「今後苦しくなりそう」を合わせると、約7割の人が住宅ローンの返済に悲鳴をあげている。

 

住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が行う住宅ローンの返済相談も急増している。今年2月には約20件だった相談が、3月には約200件、4月には約1,200件と増え、今は電話がつながりにくい状態が続いているようだ。

 

住宅ローンの滞納には「家が取り上げられ、破綻する」脅威を感じる人も多い。しかし、家を失わずに済む方法は、じつはいろいろあるそう。そこで、経済ジャーナリストの荻原博子さんが、返済がきびしいとき、絶対にやってはいけないことと、住宅ローン破綻を防ぐプランを解説してくれたーー。

 

■住宅ローンの返済に困ったら、まず、借りている銀行に相談を

 

そもそも住宅ローンは滞納しづらいものです。というのも返済が1日遅れただけで、借りている銀行から電話がくるからです。催促を無視して放っておくと、通常なら2カ月、早い場合は1カ月でブラックリストに載ってしまいます。

 

その間、銀行からの催促の電話などに追い詰められ、手を出してしまいがちなのが、クレジットカードなどでお金を借りる「キャッシング」です。今はスマホひとつで借りられ、手軽ですが、キャッシングで当面の返済額を工面するのは、絶対にやってはいけません。

 

一度キャッシングを利用すると、コロナ禍が長引いてきびしい状況が続いたら、来月も再来月もとキャッシングを重ねることになるでしょう。今、住宅ローンの金利は1%前後の超低金利ですが、キャッシングの金利は14%前後。利用がかさむと借金地獄に陥って、それこそ一家破滅の危機です。

 

そんなことになる前に、住宅ローンの返済に困ったら、まず、借りている銀行に相談に行きましょう。銀行だって、返済できずに自己破産されると貸したお金が戻ってきませんから、返済に時間がかかっても、とにかく払ってほしいのです。銀行は親切に相談に応じてくれますから、ご安心を。

 

銀行では、返済計画の見直しを行います。いくつか方法がありますが、コロナ禍できびしい方に有効なプランを考えました。

 

■ある時期だけ、毎月の返済額を抑える

 

コロナ禍で収入の減少が一時的なものだとしたら、たとえば1年間といった短期間、返済額をぐっと抑えるものです。とはいえ、毎月の返済をゼロにしてくれる銀行はほとんどありません。返済を半額に減らす、元本の返済はゼロにして利息のみを返済するなどの方法があります。

 

では、例をあげて見てみましょう。Aさん(40歳)は10年前、2,000万円を金利2%、35年ローンで借りました。ボーナス払いはナシで、毎月の返済額は6万6,252円です(住宅金融支援機構 フラット35〈ボーナス払いナシ・元利均等方式〉で試算)。

 

Aさんの例で11年目の1年間だけ利息のみの返済にした場合、11年目の利息は月2万5,308円。利息のみの返済にすると、毎月の負担は約4万円抑えられました。12年目からの返済額は毎月の6万8,378円となり、収入が持ち直していれば問題ない金額でしょう。

 

ただ利息のみの返済では元本は全く減りませんから、1年間余計に利息を払ったことになり、その分、総返済額は約12万円増えます。負担の増加が少ない印象ですが、利息のみ返済の期間が長くなると、利息ばかり払って元本が減らず、いつまでたってもローンが終わりません。できるだけ短期間で通常の返済に戻すようにしましょう。そして、家計が落ち着いたら、もう一度住宅ローンの見直しを。

 

このほかにも、「ボーナスが出ない」ケースもあるでしょう。そんなときは、ボーナス払いをやめて月々の返済額を増やす。または、ボーナス払いをやめ、月々の返済額も減らすために返済期間を延ばすなどの方法も考えられます。

 

こうした返済プランの変更には通常、変更手数料が必要です。ただ今はコロナ禍の非常事態ですから、りそな銀行や滋賀銀行など、手数料無料でプラン変更に応じてくれる銀行が増えています。

 

「女性自身」2020年6月16日号 掲載

経済ジャーナリスト

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