“コロナ不況”の真っただ中、新型コロナウイルスの感染拡大に関連する企業倒産が、早くも500件を超えた。業種別でもっとも多いのは飲食店、次いでホテル・旅館、アパレル・雑貨小売店などと並ぶが、どんな業種であれ、ひとごとではない。ある日、勤めている会社が倒産して、突然、解雇されたら……。私たち個人は、何ができるのだろう。
そこで経済ジャーナリストの荻原博子さんが、コロナ禍失業で頼れる制度を解説してくれたーー。
■「解雇予告手当」を受給
会社が従業員を解雇するときには「30日以上前に解雇を予告する」というルールがあります。ですが、会社倒産での解雇は突然で、解雇予告のないケースが多いです。
解雇予告がなければ、代わりに平均日給の30日分以上が「解雇予告手当」として支給されます。即日解雇なら30日分。解雇10日前の予告なら、30日以上必要な予告期間が20日足りないので、20日分といった具合です。
パートでも2カ月以内の期間限定契約などでなければ。解雇予告手当はもらえます。支給されないときは労働基準監督署にご相談を。
■未払い賃金の「立替払制度」
自転車操業の末、給料が滞ったまま倒産する会社があります。こうした未払い賃金は、会社に直談判しても払ってくれないケースが。
そんなとき、労働者健康安全機構の立替払制度が利用できます。未払い賃金の一部を事業主に代わって払ってくれる国の制度です。
倒産した会社が1年以上事業を続けていた、そこで働く方が倒産前の半年の間に辞めた、もしくは事後処理等のために倒産後働き、倒産後1年半の間に辞めたなどの条件を満たせば、パートでも退職の半年前から未払いになっている給料と退職金の8割が受け取れます(ボーナスは含まれません)。
また、立替払制度には、退職したときの年齢によって限度額があります。
【立替払いの額は未払い賃金総額の8割(限度あり)】
退職日における年齢:45歳以上、未払い賃金総額の限度額:370万円→立替払いの上限額:296万円(370万円×0.8)
退職日における年齢:30歳以上45歳未満、未払い賃金総額の限度額:220万円→立替払いの上限額:176万円(220万円×0.8)
退職日における年齢:30歳未満、未払い賃金総額の限度額:110万円→立替払いの上限額:88万円(110万円×0.8)
たとえば、35歳のAさんの未払い賃金が200万円とすると、限度額以内なので、200万円×8割=160万円が受け取れます。いっぽう、同じ35歳のBさんの未払い賃金は300万円。限度額の220万円を超えているので、支払われるのは上限220万円×8割=176万円です。
■企業年金
企業年金は大切な老後資金です。会社が倒産したら失われるのではと、心配な方も多いでしょう。
ですが、ご安心を。企業年金は金融機関などで積み立て、運用していますから、会社の運営とは別。ほとんどの場合、保全されます。ただし、運用の状況次第で減額される可能性はありますが。
また、確定拠出年金は金融機関を通じて個人が運用するものなので、倒産などの影響は受けません。
新型コロナウイルスの感染拡大は少し落ち着いてきたようですが、コロナ不況の出口は見えません。これらの予備知識を、頭の隅に置いておきましょう。
「女性自身」2020年9月29日・10月6日合併号 掲載