「ぼったくりとわかったときはショックで、数日間は何も手に付きませんでした。だまし取られたお金は、介護施設で働いてためてきたもの。同居する母は足が不自由でトイレが使えないのは困ると慌ててしまったんですね……」
そう語るのは、9月12日、70万円という、トイレ修理代としては法外な工事代金を支払った愛知県在住の鈴木寿美さん(仮名・60)。
トイレ修理の高額請求トラブルが急増している。全国の消費生活センターに寄せられたトラブル相談は、’13年度は550件だったが、’19年度には1,157件と倍増。
鈴木さんのような被害が多発している愛知県では「悪質!『トイレのつまり』ぼったくり被害対策弁護団」が結成された。事務局の伊藤陽児弁護士が語る。
「消費者が困っている状況で、不安や知識不足に付け込んで暴利をむさぼる行為は許されません」
実は、トイレ修理だけでなく、「水漏れ修理」「カギの解錠」「冷暖房の修理」など、急を要する作業を頼んだら、業者から法外な費用を請求されるという“緊急レスキュー詐欺”が増えているという。
国民生活センターに寄せられた相談件数は、’13年度は1,787件だったが、’19年度には3,724件と倍増。’20年4月1日から10月13日時点では2,400件と、前年度(前年同期1,689件)を大きく上回るペースで増加している。
国民生活センター・相談情報部の担当者はこう説明する。
「ポスティングのチラシやマグネット広告に加えて、’13年ごろからインターネットを利用した広告が増加したことが要因です。スマホでネット検索して『業界最安値』などの広告に安易に飛びついて被害にあうケースが増えています。被害者の半数にあたる49%が40代以上の女性。トラブルに巻き込まれたら最寄りの消費生活センターなどに相談してください」
対処法はあるのだろうか? 伊藤弁護士に聞いた“緊急レスキュー詐欺”への対処法は次の5つだ。
【1】ネットやマグネット広告の「基本料金」はうのみにしない
【2】出張費、点検料など修理費用の概算を電話で確認する
【3】見積もりは作業に取りかかる前に、書面でもらう
【4】依頼と違う工事を勧められてもすぐに契約せず、他社から見積もりをとる
【5】納得のいかない請求をされた場合、その場では料金を支払わない
※困ったときは、自治体の消費生活センターなどに相談(消費者ホットライン188)
「まず、トイレなどの水回りの修理なら市区町村の指定業者に頼むことです。水道局に問い合わせたり、ホームページなどで確認することができます。高額な請求を受けて不当だと思ったら、現金をその場で払わないこと。また電話で依頼した予定の内容を大きく超えるような工事や金額だった場合、無条件で解約できるクーリングオフも可能です」(伊藤弁護士)
5つのポイントを守って“緊急レスキュー詐欺”を防ごう!
「女性自身」2020年11月3日号 掲載