コロナ禍の今、離れて暮らす親を心配する人が増えている。
「新型コロナで帰省を自粛した人も多いでしょう。ふだんであればすぐに気が付く異変にも、気が付くのが遅れるため、心配が尽きないという声をよく聞きます」
そう語るのは、介護作家・ブロガーの工藤広伸さん。工藤さんは岩手県で一人暮らしの認知症の母(77)を遠距離介護をしながら支えている。通常であれば年に20回ほど介護のため帰省しているが、今年は新型コロナウイルスの影響で帰省の頻度は少ないという。
「離れているときこそ役立てたいのが、見守りのために使えるツールです。IT機器などを自宅に設置してスマホと連動させると、現在の様子がわかるほか、部屋やテレビのスイッチを親に代わって入れることもできます。ほかに、エアコンの温度調節も可能。ITと聞くと『難しい』と思う方も多いでしょうが、とても便利なので使いこなせるようになることをおすすめします」(工藤さん・以下同)
IT機器の設定には、家にインターネット回線を導入する必要がある。回線にはモバイル回線と光回線があり、モバイルは月額4,000円前後で開通工事が不要、光回線は月額5,000円前後で開通工事が必要になる。回線速度が安定する光回線のほうがおすすめだという。
「私は介護を始めて8年になりますが、見守りツールを活用してから介護が本当にラクになりました。機器の購入費用はかかっても、毎月かかるコストは基本的にネット回線だけなので、トータルコストはかなり抑えられます」
工藤さんが実際に使っているIT機器を含めて、見守りツールの活用法を教えてもらった。
【スマホ連動型カーテン自動開閉機】
寝たきりになったときや、毎朝同じ時刻に起きるために、カーテンレールにスマホ連動型カーテン自動開閉機を装着すると、遠隔でカーテンを開き、部屋に日光を入れることができる。値段は7,000円前後から。
「また夕方に時刻を設定しておけば、自動でカーテンが閉まります。特に認知症の親御さんを見守るときに役立ちます」
【スマートスイッチ】
リモコンが付いていない暖房器具などを、スマホのアプリでオン・オフできるのがスマートスイッチ。1台4,000円前後で購入できる。
「冬はエアコンだけでは寒いので、私の親はリビングで石油ファンヒーターを使っています。見守りカメラで新聞や洗濯物が近くにないか確認してからスイッチを押します。ヒーターの下に設置してあるボックスからアームが出てきてボタンを押す仕組みです」
【スマートロック】
「要介護の人は、家のカギをなくしがちなので鈴を付けるなど工夫をした経験があると思います。スマートロックはスマホのアプリを使ってドアの開け閉めをするので、カギの開閉を遠隔操作できます」
値段は1万〜2万円前後。両面テープで貼り付けるタイプや穴開け工事が必要なタイプがある。
【スマートスピーカー】
スピーカーに向かって話しかけるとAI(人工知能)アシスタントが応答してくれるのがスマートスピーカー。安い機種は3,000円前後で購入できる。
「認知症の母のために、今日の予定を音声で繰り返し知らせるようにしたことで、電話をする手間が省けました。スマートスピーカーから『今日はデイサービスに行く』と呼びかけられると、母は出かける支度をします」
このほか、ヘルパーや訪問リハビリなどの先生が訪れる前にも同じく声かけを設定しておき、来訪に備えてもらうという。
【録画機能付きインターホン】
やりとりの音声や映像が残るので、訪問者を特定できるほか、留守中の訪問者を録画できる機能のものもある。または、スマホで親の代わりに来訪者に応答できる機種も。値段は1万円台から。
【ナンバーディスプレイ式固定電話】
相手の電話番号が電話機のディスプレイに表示されるほか、電話機に登録されていない相手からかかると、《電話機に登録されていない迷惑電話の可能性があります》と音声で知らせてくれる。値段は1万5,000円前後から。
「実家の電話は常時、迷惑電話モードにしているのですが、私が電話をかけると『息子から電話です』と電話機が呼びかけるので、母は私の電話に出ることができます」
どれも機器の設定とスマホの設定さえクリアすれば、あとは簡単に使えるという。ゴールが見えない介護をラクにするためにも、こうしたツールをぜひ活用しよう。
「女性自身」2020年11月17日号 掲載