「これまで数多くの女性高齢者の取材をしてきましたが、家で死にたいという人が9割。施設などで死にたいという人は1割くらい。そのうえで一人暮らしの女性が在宅死をしたいと望む場合、数多くのハードルがあることを覚悟すべきことも事実です」
こう話すのは、おひとりさまの終活を応援するNPO法人「SSS(スリーエス)ネットワーク」を立ち上げた作家の松原惇子さん。最新著『ひとりで老いるということ』が話題の松原さんに、女性が安心して、ひとり在宅死を迎えるための心得を聞いた。
「まず最初に言いたいのは、自分の体調が悪くなってからでは遅い。まだ自分に気力がある時期に、つぎのことを実践すること。耳当たりの厳しいことも言いますが、全部これまで私が見聞きした現実をもとにお話しするものです」(松原さん・以下同)
【1】近所の地域包括支援センター(もしくは社会福祉協議会)とつながりをもっておく
「遠くにいる親族は全く頼りにならないと考えてください。頼りになるのは、住んでいる地域の人だけ。まずは公的支援先である地域包括支援センター(もしくは社会福祉協議会)を知っておくこと。地元の役所に聞けば、場所がわかりますので、一度、パンフなどをもらいに足を運んでほしいんです。ここが自分の最後の砦になるところだと、確認してきてください」
地元の地域包括支援センターは想像以上に丁寧に応対してくれるはず。臆することなく出向いて、担当者と顔見知りになっておくことが、いざ介護が必要となったとき、心強い窓口になる。
【2】元気なうちに親しい人に自宅のカギを渡しておく
「老後、ひとりで暮らすときには、自分から地域とつながらないと孤立してしまいます。億劫がらずに、地域のボランティア活動や習い事、スポーツクラブなど、なんでもよいので、地元の社交場に顔を出すこと。これがいざというとき、生きる絆に。こうした存在ができたら、自宅のカギを預けるようにすると、自分が身動きできなくなる不測の事態に対応でき、安心」
ただ実際には、自宅のカギを渡すほど親しい人がすぐにできるわけではない。いますぐに渡すというよりも、カギを渡してもよいというレベルの友人作りから始めてはどうだろうか?
【3】書類の処理を頼める若い友人を見つける
「高齢になると、税金や福祉関係などの書類の処理がだんだんむずかしくなってきます。これをサポートしてくれる若い人が身近にいると心強い。これも地域の社交場に参加することで知り合うことができると思います」
【4】親切な友達には注意が必要
「これは【2】【3】と矛盾すると思われるかもしれませんが、やたらに親切に近づいてくる人には注意も必要です。高齢になると、寂しい気持ちに負け、親切にされるとつい他人にダマされやすくなることはさけられません」
松原さんによれば、親戚などから「養女」をとるケースもトラブルが多くおすすめできないとか。
【5】銀行、郵便局のカモになるな
「世知辛い世の中で、昔は信用がおけた銀行や郵便局の訪問員に不必要な金融商品を売りつけられる事件も多発しています。とくに銀行の窓口がもっとも危険。金融に知識のない老人は銀行や郵便局にはむやみに近づかないことがいちばん安全です」
不安が多いウィズコロナ時代を乗り切る知恵としても、この心得を活用してはいかが。
「女性自身」2021年2月2日号 掲載