新型コロナウイルスの新規感染者数が各地で過去最高を更新するなか、ワクチン接種を円滑に進めるため「ワクチン休暇」を導入する企業が増えている。そんな「ワクチン休暇制度」について、荻原さんが解説してくれたーー。
■ワクチン接種はコロナ禍収束のキモ
ワクチン休暇は、企業が独自で取り組む制度なので決まりはありませんが、ワクチンを接種する日を特別有給休暇にする、就業時間の途中にワクチン接種のための“中抜け”を認め、中抜け時間も出勤とみなすなどが多いようです。
従業員は年次有給休暇を使わなくても給料の心配なくワクチンの予約が取れるので、平日でも早くワクチンを受ける動機づけになり、接種が休日に集中するのを防ぐ効果もあります。
さらに、ワクチン接種の翌日に副反応が出た場合にも特別有給休暇が取れる規定や、家族のワクチン接種に同行するときも休暇扱いにする企業もあります。
私は2回接種を終えましたが、2回目は接種当日の夜から軽い吐き気があり、翌日は38度台の発熱。熱は1日でおさまったものの、丸1日寝込みました。私の知人には発熱した人が多く、接種翌日のワクチン休暇は「絶対欲しい」というのが実感です。
こうしたワクチン休暇は4月中旬以降、大企業から広まってきました。コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社、三井倉庫ホールディングス株式会社、ヤフー株式会社などが接種当日を就業時間扱いとし、副反応が出た場合に特別有給休暇の取得を認めています。また、正社員だけでなくパートやアルバイトも同じ規定を適用するところが多いです。
国も、河野太郎新型コロナウイルスワクチン接種推進担当大臣が5月13日に経団連に要請するなど、ワクチン休暇の導入を後押し。最近では顧客と接する機会の多い金融機関などでも広がっています。
中小企業でも導入したい企業は多いと思いますが、就業規則の改正などには専門家の手助けが必要でしょう。そこで東京都では、導入を検討する企業に、社会保険労務士を無料で派遣する制度を6月から始めました。
とはいえ、「ワクチン休暇なんて無縁」という方も多いでしょう。山梨県は、個人事業主やワクチン休暇制度などを利用できない従業員、アルバイトやパートの方などに、「新型コロナウイルスワクチン副反応休業助成金」を設けました。副反応が理由で仕事を休んだ日の給与や手当のない人に、1日4,000円を最大2日間(8,000円)支給します。「仕事に支障をきたす」「休むと手取りが減る」とワクチン接種をためらう方の背中を押す施策になるでしょう。全国に広まってほしい制度だと思います。
感染爆発ともいえる新型コロナには、ワクチン接種が頼みの綱です。国にはワクチン供給を急いでいただきたい。加えて体質などの関係でワクチンを打てない人、打ちたくない人に、ハラスメントが及ばないことにも注意しておきましょう。