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コロナ禍で生活が困窮した方に、国が無利子・無担保でお金を貸す「生活福祉資金の特例貸付」の受付けが、9月末で終了しました。

 

特例貸付には、20万円まで1回限りの「緊急小口資金」と、単身世帯なら月15万円、2人以上の世帯なら月20万円が3カ月分の「総合支援資金」がありました。これらは20年3月に始まり申請期限を10回も延長。特に総合支援資金は、初回貸付分に加え延長分、再貸付分を追加し、合計3回、9カ月分の貸し付けを行いました。

 

つまり緊急小口資金20万円と総合支援資金20万円×9カ月で、1人最大200万円。国全体では約335万件、約1兆4千億円に及び、リーマンショック時の約20倍の利用があったのです(22年10月1日・厚生労働省)。

 

特例貸付は借金ですから、返済が必要です。返済時期はいつ借りたかによりますが、22年3月末までに申請した緊急小口資金と総合支援資金(初回貸付分)の返済は、23年1月から始まります。

 

■どうしても苦しいなら自己破産も視野に

 

ただ、特例給付には返済免除の規定があります。たとえば23年から返済が始まる分だと、21年度または22年度に、借りた本人と世帯主が住民税非課税なら、返済の必要はありません。

 

住民税非課税は地域によりますが、東京都で会社員やパートなど給与所得者だと、単身の場合は年収100万円以下。配偶者と子供1人を扶養する3人家族だと年収205万円以下ですから、確かに生活は厳しい。住民税非課税での返済免除は当然でしょう。

 

ですが、コロナ禍で解雇され、転職先では非正規雇用となり、住民税非課税の基準を多少上回って住民税は納めていても、コロナ前には到底及ばない低収入に苦しむ方はたくさんいます。第8波が心配される今、新型コロナ関連の倒産は、10月も74件を数え、累計4357件(22年10月26日・帝国データバンク)。景気が回復しないなかでの返済開始で、免除の基準が厳しすぎるのではないでしょうか。

 

特例貸付の返済免除には、貸し付けを申請した社会福祉協議会での手続きが必要です。また、緊急小口資金と3回の総合支援資金で、それぞれ別の手続きがあります。返済の相談もお早めに。

 

社会福祉協議会によると「返済のめどが立たない」と自己破産する方が、9月中旬に都内だけで1千人以上いたといいます。また自治体は、「返済できない相談者の急増が課題」と危機感を募らせています(21年・厚生労働省調べ)。

 

生活の立て直しが間に合わず、借金を抱えてどうしても厳しい場合、再出発のための選択肢として、自己破産もありだと私は思います。しかし、コロナ禍の困窮は自己責任ではありません。国の新たな支援があってしかるべきだと思いますが、岸田首相はまったく無関心。庶民の苦しみを見る気がない首相にあきれてしまいます。

経済ジャーナリスト

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