1月下旬に「10年に1度」と言われる大寒波が襲来し、2月にも10~11日にかけて関東甲信で積雪が記録されるなど、厳しい寒さが続く日本列島。そんななか、Twitterでのある呟きが注目を集めていた。
2月上旬に投稿された呟きによると、投稿主の知り合いが、飲酒したままこたつに入って寝てしまい、翌朝に脳梗塞で亡くなってしまったという。あわせて、飲酒した状態でこたつに入って寝ることへの注意喚起が綴られていた。
2月中旬以降の気温については、各地で「平年並み」とされているが、突然の寒波などが襲ってくる可能性もあり、今後もしばらくは、こたつやエアコンといった暖房器具は重宝されそうだ。
では、こたつを始めとする暖房器具について、使用する場合にはどんなことに注意すればいいのだろうか。その理由や、悪影響が出る原因も含めて、朝倉医師会病院呼吸器科部長で日本内科学会総合内科専門医の佐藤留美医師に聞いた。
まずは注目を集めたTwitterでの投稿について、佐藤医師は亡くなった原因を「脱水症状」だと推測する。(以下、カッコ内はすべて佐藤医師の発言)
「こたつに入ることと飲酒、どちらも脱水症状を加速させる要因になります。脱水症状が起きると血液の中の水分が少なくなってしまい、血液がドロドロになって脳や心臓の血管が詰まりやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞といった病気に繋がります。最悪の場合、今回のように死に至るケースも。今回の件は、そういった脱水症状が引き金になって亡くなられたのだと思います」
こうした病気に繋がる脱水症状を避けるための対策として、佐藤医師は「こたつに入っているときのこまめな水分補給」と「こたつに長時間入るのを避ける」ことをあげる。
「長時間入っていると、こたつに入っている部分とそうでない部分に体温の差が生じます。そうすると自律神経の乱れに繋がるります。長時間こたつを使用する場合には、1時間に1度はこたつから出て、服装にも気をつけてください。こたつに入る部分は薄着に、こたつから出ている部分は厚着を心がけていただくと、体温の差が広がるのを避けられます。特に、厚手の靴下やズボンを履いたままこたつに入ることは控えてください」
さらに、脱水症状を避けるためには「こたつの温度」も重要だという。
「寒いからといって、こたつの温度を上げすぎるのもよくありません。温度を高く設定することで、脱水症状も起きやすくなり、こたつ内外の体温差が開きやすくなりますし、低温やけどの原因にもなりかねません。もし温度調整が可能なこたつであれば、内部温度はだいたい35度~40度になるよう設定してください。体感的には、快適と感じるよりも気持ち低いくらいがベストです」
「低温やけど」は、45度~50度前後のものに長時間皮膚が触れ続けることで発症すると言われており、通常の高温やけどとは違って「熱い!」という感覚がない。初期症状は皮膚に赤みがさす程度で、気づかずに放置して重症化してしまうケースもある。脱水症状と同様に、ときどきこたつから出て皮膚に異常がないかを確認する必要があると佐藤医師は指摘する。
また、暖房器具といえばこたつ以外に、エアコンやオイルヒーターなどもある。いずれを使用する場合にも「同時に室内を加湿する」ことがポイントだという。
「冬場で、空気自体が乾燥している時期ですので、部屋の中も特に乾燥しています。 暖房器具をつけることでさらに乾燥してしまうので、加湿器をつけることが大事です。ご自宅に加湿器がない場合は、洗濯物を室内で干す、濡れたタオルをハンガーに吊るすなどして部屋に置いておくと、乾燥予防になります」
空気の乾燥は、口や鼻の粘膜の乾燥に繋がり、風邪をひく原因にもなる。風邪予防の意味も含めて「いつでも水分はこまめに摂取してほしい」と、佐藤医師は改めて警鐘を鳴らす。
「口や鼻の粘膜が乾燥することによって、風邪の原因となるウイルスや細菌が体内に侵入しやすくなります。風邪予防としても乾燥を防ぐこと、水分をこまめに摂取することが大事です。 他にも風邪予防の基本は、外出から帰ってきたら手洗い、うがいを心がけること。ビタミンA、ビタミンC、タンパク質を多めにした栄養バランスがとれた食事を摂ること。身体の免疫力を高めるために睡眠をしっかりとる、などです」
さらに風邪予防の一環として、「体温が低下することで免疫力が低下するため、体温を温めるような食べ物や飲み物を摂取してください」と佐藤医師。昨今では電気代の高騰を受けて、暖房器具の使用を控えるという声も少なくないが、やはりそれは体にとって良くないのだろうか。
「全くエアコンをつけないというのも、身体にはかえって悪いと思います。気温の急激な温度差によって、『ヒートショック』という、血管系の障害が起きてしまう可能性があります。寒い室内で血圧が上がった状態で、熱いお風呂に入ると一気に血圧が下がって血管が拡張すると、その反動で頭や心臓の病気に繋がり、突然死などの原因にもなります。ご自宅の中でも厚着をするなど、エアコンの設定温度を下げるために節約する工夫をしたほうが良いかなと思います」