電話による詐欺が後を絶たない。9月17日には長野県上田市の80代女性が3千885万円を、12日には栃木県宇都宮市の89歳女性が5千810万円を、電話での詐欺でだまし取られたことが発覚した。
電話による詐欺で増えているのが「還付金詐欺」だ。国民生活センターによると、’22年度は過去5年間で最多の相談数、4千849件を記録した。
実は本誌記者の79歳の母も12日、還付金詐欺で約70万円をだまし取られた。その手口とはーー。
その日母が帰宅すると、家の電話が鳴っていた。慌てて取ると、
「○○市役所の△△ですが……」
母はまったく疑わず話を聞くと、なにやら返金が2万8千円ほどあり、今日中の手続きが必要とのこと。母はいったん断ったという。
「いま帰ってきたばかりで疲れている。そのお金はいらない」
詐欺師は“お金に余裕がある”と思ったのだろう。獲物を逃すまいと、執拗に説得が続く。
「1円だってお母さんの大切なお金です。ぜひ受け取ってください」
しぶしぶATMに行くと、電話での誘導が始まった。
「私どもが還付金を振り込む口座を入力してください。私どもはみずほ銀行なので、みずほ銀行をポンと押して。そう。次は支店を……」
本当は振込先を指定しているのだが、母は還付金を送ってくる「振込元」だと思わされていた。
「次はお母さんの受領番号の登録です。6ケタの番号を言いますよ。1・9・5・3・6・9です」
ATMの画面には「振込金額」という表示があるはずだが、機械に疎い母は操作することで精いっぱい。金額という認識はないまま、まんまと19万5千369円をだまし取られた。さらに詐欺師は、
「エラーが出て登録できません。ゆうちょ銀行なら確実なので、ゆうちょの口座を持っていませんか」
都市銀行からゆうちょ銀行にATMを“ハシゴ”させられ、被害総額は約70万円。翌日警察や銀行に被害を届け出たが、お金が戻る可能性は限りなく低いそうだ。
いま記者がもっとも恐れているのは、母が再び詐欺にあうことだ。詐欺被害者は、詐欺師からするとだましやすい“カモ”。新たな詐欺の標的にされやすいという。
実際“オレオレ詐欺”に2度あった事例を警察庁が紹介している。
当時73歳だった女性は息子を名乗る男からの電話でオレオレ詐欺にあい、200万円をだまし取られた。
6年後、再び息子を名乗る男からの電話を受け、女性は「窮地の息子を助けるのは当然」と現金250万円とキャッシュカードを渡してしまう。数日後、金融機関からの連絡で詐欺被害が発覚。3つの銀行にあった1千200万円が根こそぎなくなっていたそうだ。
冒頭の詐欺被害も、被害者は複数回現金を送っている。詐欺師はだましやすい人から徹底的にお金をむしり取るのだ。