今年4月は3年に1度の介護保険料改定の時期。そこで47都道府県庁所在地と政令指定都市、合わせて全国52都市の65歳以上の介護保険料の基準額をまとめた。ダントツで高かったのは大阪市で月9,000円を超えた。
「値引きシールが貼られたお総菜を買うなど、爪に火をともす生活をしているのに、少ない年金から天引きされる介護保険料も上がったらどうやって暮らしていけば」
うつむきながらそう語るのは東京都新宿区在住の84歳の女性。
3年に1度、各地の自治体で見直されている65歳以上の人が払う介護保険料。4月から始まった2024~2026年度(第9期)から新しい基準に基づいた金額になっている。
そこで本誌では、県庁所在地と政令指定都市の全国52都市の介護保険料の基準額を調査。その結果、平均基準額は月6,492円と過去最高となった。
“介護を社会で支える”と介護保険制度が始まった2000年度は全国平均で月2,911円だったが、報酬改定に合わせた見直しのたびに上昇し、ついに2倍以上に。その一方、年金の受給額はどうか。介護保険制度に詳しい淑徳大学の結城康博教授(社会福祉学)は言う。
「2024年度の公的年金の支給額は、物価や現役世代の賃金の上昇に合わせて国民年金で1,750円増の月68,000円(68歳以下)、厚生年金は夫婦2人のモデル世帯で6,001円増の230,483円ですが、物価の上昇に追いついていないため、実質的には目減りしています。物価の高騰が続くなか、介護保険料が天引きされて手取りは減るばかり。高齢者の暮らしぶりはますます厳しくなるでしょう」
介護保険料の上昇には、高齢者が増え、介護保険サービスの需要が伸びたことが影響している。
「団塊世代が75歳以上の後期高齢者になり介護サービスの利用が増加したため保険料が押し上げられています。
介護サービスの費用は利用者が1割、残りの9割の半分が税金、もう半分が介護保険料で賄われています。ちなみに40~64歳の人の介護保険料も平均1人当たり6,276円と前年度より60円増えています」(結城先生)
この介護保険料の基準額から、所得や世帯状況に応じて段階的に保険料が設定され、払う保険料は基準額の0.25~2.5倍になる。
ランキングで注目すべきは、もっとも高い大阪市と最安値の山口市では、基準額で、月3,739円の差が開いていること。年間44,868円もの違いだ。
基準額が年間10万円を超えた大阪市介護保険課の担当者が語る。
「大阪市はひとり暮らしの高齢者が多く、ほかに頼らざるをえなくて介護サービスを利用する機会が増加。それに合わせて保険料が高くなっております」
とはいえ、保険料が高い安いだけでは費用対効果は判断できない。
「大阪市は訪問介護の事業者数が多く、その分、手厚いサービスを受けている人が多いとも言えます。
一方、介護保険料が安い自治体では、施設整備が遅れていたり、介護サービス料が低く抑えられる在宅介護が多かったりする可能性もあります」(結城先生)
ちなみに基金を取り崩して、保険料を前期と同額にする自治体や、大津市や鳥取市のように値下げをしたところもあるが……。
「2040年には平均で月9,000円ほどになるといわれる介護保険料は、今後下がることはないと考えたほうがいいでしょう」(結城先生)
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