奨学金は、大学生の55%が利用しています(2022年度、日本学生支援機構)。国は2024年度から給付型奨学金を拡充しましたが、奨学金サイトを運営するガクシーによると、約8割が貸与型を受給。返済に苦しむ人も多いです。
そんななか、奨学金の返済を支援する自治体が増えています。
千葉県と千葉市は、教員採用者の奨学金返済を2024年度から支援します。条件は千葉県・千葉市で教員として11年以上働くこと。日本学生支援機構による無利子の第一種奨学金の返済を最大約307万円、全額を返済するまで補助します。
奨学金の借入総額は平均310万円ですから、約307万円の補助はほぼ返済全額に当たる人が多いでしょう(2022年9月、労働者福祉中央協議会)。教員採用者を対象とした返済全額の支援は全国初で、問い合わせが殺到したようです。
また、補助金は「代理返還制度」を活用して、教育委員会が直接、日本学生支援機構に払う点もメリットだと思います。奨学金を借りた本人は返済不要ですし、補助金は所得にならないので税金が増えることもないからです。
■大分市では卒業後、市内に住むか働くことで返済免除に
ほかの自治体でも医師や看護師、介護職などの人手不足解消を目指す支援が多く見られますが、中小企業の人手不足も深刻です。
兵庫県では、従業員の奨学金返済を補助する中小企業を支援しています。これまでも県内に本社がある中小企業で正社員として勤める人に、県と企業が2対1の割合で補助金を支給してきました。
2024年度からはさらに拡充します。補助期間を5年から最大17年に。対象年齢を30歳未満から40歳未満に。結果、補助額は県と企業を合わせて最大5年で90万円から、最大17年で306万円になります。UターンやIターンでも利用しやすくなるでしょう。
返済免除の奨学金を立ち上げたのは大分市です。2025年度から「大分市返還免除型奨学資金」を始めます。対象は市内の高校に在籍するか、保護者が市内在住で市外の高校に通う人です。
奨学金は入学一時金として県内大学進学者に50万円、県外大学なら80万円。学費として年50万円、4年制大学だと200万円です。
卒業後は市内に住むか、市内の事業所で働くなどで、1年ごとに借入総額の5分の1が返済免除となり、5年で全額免除されます。若者に定着してほしいのでしょう。
自治体による奨学金の返済支援は2023年6月時点で42都道府県と717市区町村が実施しています。進路希望と合うものがあれば積極的に活用するといいでしょう。
5月29日には、三菱UFJ信託銀行が返済不要な給付型奨学金を支給するファンドを立ち上げると発表しました。富裕層などから資金を調達し、運用益で奨学金を支給する試みは国内初です。
若者が奨学金という名の借金を負わなくても済むような、もっと活用しやすい返済支援が広がってほしいものです。