最近、ネットやカタログの通信販売で決済方法が多様化している。
以前からクレジットカード(以下、クレカ)や銀行振り込み、代金引き換え、コンビニ決済などはあったが、最近よく見かけるようになったのが「後払い決済サービス」だ。
後払い決済サービスとは、ネットプロテクションズの「NP後払い」、SCOREの「スコア後払い」など名称はさまざまだが、決済の仕組みは同様だ。AさんがB社の商品を注文した場合、B社は後払い決済事業者に代金を請求し、商品をAさんに発送する。後払い決済事業者はB社にすぐ立て替え払いをし、Aさんに請求書を送る。AさんはB社からの商品到着後に、後払い決済事業者に代金を支払うものだ。
従来のコンビニ決済だと利用者からの入金が確認された後で商品が送られてきた。だが、後払い決済の利用者は商品を手にしてから代金を払えばいいという安心感がある。販売会社にとっても、後払い決済事業者から商品代がすぐに回収できるので取りはぐれる心配がない。
こうして利用が増加し、2023年度の後払い決済市場は前年度より2割拡大して1兆5千億円規模だ。2028年度には2兆8千億円規模に拡大するとの予測もある(2025年3月、矢野経済研究所)。
「後払い決済は便利なサービスですが、最近、被害を訴える人が増えています」
そう話すのはキャッシュレス決済の専門家、山本正行さん。国民生活センターに寄せられた後払い決済に関する相談は、2024年度が約4万4千件で2021年度の約3倍。2025年度もこれを上回るペースで増加中だ。
トラブルでもっとも多いのは、定期購入に関するものだ。
Cさんは「初回限定500円」のシャンプーセットを見つけた(イラスト参照)。通常6千500円の商品が、9割以上値引きされて500円。後払い決済で注文した。
実はCさんは13歳。500円なら払えると親に内緒で注文。だが、2回目の商品が届いたこと、さらに請求額の6千500円にも驚いて親に相談。親が販売会社に解約を申し出たが「1年間の定期購入で解約はできない」の一点張りだという。
「商品の特徴などを長々と説明した後、大切な契約内容が小さな文字で書かれています」(山本さん)
面倒だからと小さな文字を読み飛ばしたことがある人も多いのではないだろうか。そこには、定期購入かどうかや2回目以降の料金、解約可能な時期・期限、キャンセル料などが記載されている。「読まなかった」では通用しないのだ。
ひどいのは、解約などの問い合わせに対応しないケースだ。
Dさん(70代)は「回数縛りがない」定期購入で、初回のみ4千円引きの美容液を購入。初回到着後すぐに解約手続きをした。
すると「初回のみで解約する場合は割引額の4千円を3日以内に支払え」という連絡がきた。Dさんは「そんな解約条件はなかった」と反論したが返答がない。何度も連絡を重ねると、最後に「相談は消費生活センターへ」というメールが来て連絡が絶たれたという。
こうした消費者トラブルを減らすため、後払い決済サービスの事業者7社が2021年に「日本後払い決済サービス協会(以下、協会)」を設立した。協会の運営にも携わるネットプロテクションズの武藤晃義さんはこう話す。
「クレカ会社などを対象とする『割賦販売法』と同等の厳しい自主ルールを設けて、後払い決済は厳格に運営されています。
ですが、悪質な販売会社は後を絶ちません。後払い決済サービスから排除するため、協会員で悪質な販売業者の情報を共有する仕組みもつくりました」
