ふだんは評判のよい歯医者さんとして多くの患者を診ているが…… 画像を見る

「熊本に、不思議な力を持った女性歯科医師がいる――」

 

数カ月前、記者はこんな噂を聞きつけた。なんでも、その歯科医師は、亡くなった人の声が聞こえるばかりか、不思議な力で病気やケガまで治してしまうという。

 

実父が他界して間もない記者は、その歯科医師に会ってみたいと考えた。遠方に暮らしていた父親とは数年来、まともな会話もないまま、不意に逝かれてしまい、心残りがあったからだ。

 

休暇を使って熊本を訪ねると、噂の歯科医師が開業しているクリニック、その待合室には多くの患者の姿があった。そう、そこは人気の歯科医院だったのだ。

 

記者は訪問の目的を、女性歯科医師に正直に話した。週刊誌の記者という素性も明かし「取材も兼ねて、亡き父の言葉を聞かせてほしい」と。すると、彼女は「ちょっと聞いてみます」と、左手の人さし指で、右手の甲をトントンとたたき、聞き取れないほど小さな声で何やらつぶやいていた。そして数秒後。

 

「神様のお許しが出ました。取材、お受けしましょう」

 

歯科医師は自らを「輝光」と名乗った。67歳だというが、若々しくて、とても60代には見えない。

 

「両親とも医者、3つ上の姉も医者という家に私は生まれました」

 

輝光さんは歯科医師となり、病院経営をしていた男性と結婚。そして、長男がおなかにいた27歳のとき、奇妙な夢を見たという。

 

「白い大蛇が私の顔を見つめながら、真っ赤な舌をチロチロチロと3回出す、そんな夢でした」

 

その日を境に輝光さんに不思議な力が宿り始める。故人の声が聞こえたり、浮遊する魂がはっきりと見えたりするように。あるときは、こんなことがあった。

 

「お通夜の席でした。亡くなったのは子どものいない高齢男性。そこに、ずっと彼を看病してきた甥御さんがいて、私に言うんです。『伯父の遺産、いくらかもらってもいいよね』と。私はこっそり亡くなった彼に尋ね、こう言葉を返しました。『80万円ぐらいなら』。すると甥御さんは、『あんなに面倒を見たのにそれだけ』と不服そう。私は故人から伝えられるまま、さらに続けました。『あなた、これまでも勝手に150万円以上、くすねたんでしょ』。思い当たる節があったのか、甥御さんはギョッとして、黙り込んでしまいました」

 

■「ずっとそばにいるよ」彼女は号泣してました

 

ある地元企業のトップが他界したときには、こんなことも。

 

「亡くなった男性には内縁の女性がいて。2人とも、私の患者さんでした。30年以上も続いた関係だったのに、彼女は遺産分与もなければ、葬儀にも呼ばれなかった。ひどく塞ぎ込んでいた彼女が心配で私、お宅を訪ねたんです。そしたら、彼女の隣に燦々と輝く、彼の魂が浮かんで見えた。『彼、そこにいますよ』と教えました。そして『僕はずっとここに、ずっときみのそばにいる』という故人の言葉をそのまま伝えたんです。彼女? 号泣してましたよ」

 

輝光さんに宿った不思議な力は、亡き人の声が聞こえるだけにとどまらない。本人が「あの夢を見たときから神様が私に乗った」と語る、その力の神髄は……。

 

「医療に従事するなかで、西洋医学の常識では治らないはずの患者さんを、一縷の望みとばかり神様にお願いしたら『あれ? 治った!』ということが何度もあって。そういう不思議な体験を重ねていくなか、53歳ぐらいのころですね、奇跡のようなことが起きて」

 

最初に奇跡が訪れたのは、輝光さんの実の姉だった。病院の理事長でもある姉は、こう証言する。

 

「私、15年ほど前から、何度か倒れていて。最初は小脳出血でした。一命を取り留め意識が戻るとベッドの隣に妹がいて一生懸命、拝んでくれていたんです。当初は、そんな力が彼女にあるなんて知らないし、信じられずにいましたけど。担当した脳外科の、国立大の助教授もされてる先生が言われたんです。『何万人と診てきたが、あなたのように手術もせずに回復した患者は初めてだ』と」

 

3回目の脳出血のとき。出かけていた輝光さんに、姉の秘書から「理事長が倒れました」と緊急連絡が。輝光さんは「すぐ、姉に代わって」と告げると、遠隔で力を送り始めたという。姉は振り返る。

 

「私、まったく喋ることができなくなっていて。担当の医師が席を外したときに、秘書が私の耳元に電話を押し当ててきた。妹の声が聞こえたなと思った矢先、ものの数分でした。私、言葉が出るようになったんです。直後に戻ってきた医師も驚愕してました。『え、話せるの? 治ってますね!?』って」

 

今では姉はもちろん、秘書や看護師たちまでもが、輝光さんの不思議な力を信じきっている。

 

「もうね、自分たちの手に負えないことや、困ったことがあると、皆して『これはもう、輝光さんにお願いしましょう』って(笑)」(姉)

 

神様に質問することで、アレルゲンなど、その人の体に合わない食品を特定することも可能という。

 

「発疹が出たり、アレルギーで悩んでいる人には、食べたものを聞くんです。そのパッケージに書かれている原材料を、神様に向かって読み上げると『イエス・ノー』で、どれが悪かったのか、合わなかったのか、教えてくれるんです」

 

■父からの思いがけない祝福の言葉に胸が熱く

 

「お父さん、とても喜んでますよ、息子さんとまた、こうして言葉を交わせることを」

 

記者が「父は今、何か言ってますか?」と尋ねると、先ほどと同様、指をトントンと軽くたたいてから、輝光さんはこう切り出した。

 

そこからは「たまには思い出してほしい」だの、「いまいる場所は居心地が悪い」だのという、死んだ人間の愚痴やたわいもない思い出話が続いた。リップサービスなのか「故人が全員、お話ができるわけじゃない。こんなにたくさんお話ができるのは、お父さんの魂がきれいだから」と輝光さんは言うが、息子としては、まだ半信半疑な思いが拭いきれずにもいた。だが……。

 

「あら、お父さんが『結婚おめでとう』って言ってますけど、誰か最近、ご結婚されたんですか?」

 

じつは、すでに五十路を迎えている記者だが、父が他界したのちに再婚していた。そんな相手がいることを父には知らせていなかったし、初対面の輝光さんが知る由もない。驚きを隠しつつ「じつは私が」と打ち明けると、

 

「あ、そうでしたか。お父さん、『幸せになれ』って言ってますよ」

 

思いがけず、死んだ父からかけられた祝福の言葉は、胸に迫るものがあった。

 

画像ページ >【写真あり】“神様が乗っている”という輝光さん。神様に問いかけて答えをもらう(他2枚)

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