寒さが増す秋のレジャーシーズン、温泉やスーパー銭湯、屋内プールなどの温浴施設に足を運ぶ人も多いだろう。厚生労働省が発表した「衛生行政報告例」によれば、コロナ禍以降、温浴施設の数や利用者は増加傾向にあるという。サウナブームやインバウンドも追い風となり、週末の温浴施設は混雑することも珍しくない。
■レジオネラ菌の症例報告数はこの10年では倍増!
一方で利用者の増加とともに、衛生管理の不備で営業停止となる温浴施設も相次いでいる。国立感染研究所によると、「レジオネラ症」の症例報告数は2014年に1千248件だったのに対し、2024年には2千419件とほぼ倍増している。
今年も、基準値を大幅に超えるレジオネラ属菌が検出される事例が多発。6月には島根県の温浴施設で基準値の1千500倍のレジオネラ属菌が検出。9月には、兵庫県の温泉施設で基準値の1千200倍にあたる菌が検出されている。
「レジオネラ属菌は自然界の水環境に存在する細菌であり、20~50度くらいの水が繁殖に適しているため、温水環境において簡単に増殖します。循環配管にたまった水に“ぬめり”(バイオフィルム)ができると菌の住処になり、さらに人の皮脂や湯あかが栄養となって増殖。そのため、清掃や塩素濃度の管理が十分でない施設の場合、短期間で基準値を超えるレジオネラ属菌の増殖が起こるのです」
こう話すのは東京むさしのクリニック院長の橋本将吉先生だ。
レジオネラ属菌は、本来「検出されないこと」が安全の基準とされる。だが、温浴施設は菌が繁殖しやすい環境であり、利用者が増えるほど水質への負荷も大きくなる。清掃や管理が追いつかないケースに加え、光熱費や人件費などのコスト削減や24時間営業といった運営形態も、衛生管理を難しくしている。その結果、基準値を大幅に上回る施設が出るのだ。
では、レジオネラ属菌に感染すると、どうなるのだろうか。
■不衛生な温浴施設で、菌を含んだお湯のしぶきで感染
「レジオネラ属菌は、菌を含んだお湯や水が霧状のしぶき(エアロゾル)となり、それを吸い込むことで肺に感染します。人から人にうつることは基本的になく、健康な人が感染しても症状が起こることは少ないです。ただし、高齢者や基礎疾患のある人がレジオネラ属菌に感染すると、重症化しやすいです」(橋本先生、以下同)
