日本人の2人に1人が罹患するという“がん”は、もはや国民病。“来るべき病い”に立ち向かうため、治療法を知るだけではなく、治療費の準備も重要になってくる。そこで、自らも乳がんサバイバーであるファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんが、がん治療にかかる費用への“知っておきたい3つの備え”を挙げてもらった。
【1】“がん資金”は100万円!
「もっとも治療費がかかる1年目をしのぐために、いつでも使える100万円を準備しておきましょう。がんの部位や進行度によって治療費は変わりますが、当面は安心して治療を受けられるはずです。また、がんは長い期間、再発リスクと向き合う病気です。民間のがん保険で、たとえば300万円の一時金が支給され、そのうち200万円が手元に残ったとしても、買い物などで使ってしまわず、再発した場合に備えて、手元に残しておくのが賢明です」
【2】治療費以外も意外とかかる!
7年前に乳がんが見つかった黒田さんは、これまでに360万円も“がんにならなければ必要なかった費用”が、かかったという。
「このうち150万円が高額療養費制度などで戻ってきましたが、交通費やがんの関連書籍の購入など、さまざまな出費がありました。日帰りの抗がん剤治療などで体調が悪くなると、タクシーで帰らざるを得ません。また、専業主婦ががんにかかれば、外食や総菜の購入等も増え、食費もかさみます」
【3】仕事は辞めない!
会社員は長期間休んでも(最大1年6ヶ月)、収入の3分の2相当の傷病手当金が受け取れる制度がある。
「安易に辞めず、可能な限り仕事を続けてください。あくまでもがん闘病は人生の中の通過点。闘病後の収入は必要です。また、職場のがんに対する理解不足も根強いですが、職場に治療計画、その後の見通しを提示できれば、企業側も安心できるでしょう。何より大事なのは、がんになってもサポートを受けられるよう、ふだんから良好な人間関係を築くことです」
がんに対する“備え”として、黒田さんはこう締めくくる。
「治療費をできるだけ安く抑え、早く社会復帰するために大事なことは、“がんを早期に見つけ、適切に治療すること”なのです」