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「がん探知犬はがんに共通する“臭い物質”に反応します。また、たとえば乳がん患者の検体(尿や呼気)と大腸がん患者の検体も嗅ぎ分けます。どんな種類のがんにも特有の臭いがあるので、がん探知犬によって、がんの有無や部位の特定ができるのです」

 

こう語るのは、千葉県館山市にある「セント.シュガージャパン がん探知犬育成センター」代表の佐藤悠二さん。5月12日、山形県金山町は定期健診を受ける町民を対象に、臭いでがんの有無を嗅ぎ分ける“がん探知犬”による無料の検査を、全国の自治体で初めてスタートさせた。

 

検体となる尿は町の診療所で採取された後、冷凍して日本医科大学千葉北総病院(千葉県印西市)に送られ、がん探知犬による判定が行われる。今回分析を担当する千葉北総病院の宮下正夫教授によると、「1,000人の検体を目標に検査をする予定」だという。

 

「まだ研究段階ですので、通常の健康診断に取り入れる“試みをする”という感じです。尿を検査するだけでがんの有無がわかれば、無駄ながん検診をしなくて済む人たちがたくさん増え、しかも早期がんの発見にもつながる。今回の健診で、がん探知犬の有効性が認められれば、さらにほかの自治体にも拡大していくことでしょう」と大きな期待を寄せる。

 

現在、日本にいるがん探知犬は5頭で、すべて狩猟犬として嗅覚に優れたラブラドルレトリバー。その犬たちを毎日訓練しているのが、前出の佐藤さんだ。金山町のがん検診も、この犬たちが臭いの嗅ぎ分け判定をおこなう。5頭は、尿や呼気から出る6種類のがん(乳がん、大腸がん、肺がん、胃がん、前立腺がん、白血病)の臭いの嗅ぎ分けが可能で、その的中率は、ほぼ100%!

 

佐藤さんは、’04年からがん探知犬の育成を始める。そして、’05年2月から本格的に訓練がスタート。がん探知犬の育成から12年。まだ研究段階とはいえ、自治体ががん検診に導入するほど、その能力が認知されるようになった。

 

「最終的な目標は、がんの臭いを判別できるセンサーの開発です。がん探知犬をどんどん増やして、全国でがん検診をやるというのはとても無理な話。いまいる5頭で、1カ月に最大1,000検体の判定をするのが限界です。だから、がん探知犬を増やすだけではなく、その嗅覚を機械化し、がんの臭い物質を化学的に特定できるセンサーを開発する。すでに10年ぐらい、九州大学と共同で研究を続けています」(佐藤さん)

 

藤さんによると、息を吹きかけるだけで、がんの臭い物質を探知できるセンサーが開発されるのは、「時間の問題」だという。そこで共同研究をしている、「九州大学 味覚・嗅覚センサ研究開発センター」の客員准教授で、伊万里有田共立病院外科部長の園田英人医師にも、話を聞いてみた。

 

「がんの臭い物質というのは、1つだけで成り立っているわけではなく、いくつかの物質があることがわかっています。その臭い物質をいま、化学的に検証している段階です。犬の嗅覚と同じレベルで、臭い物質に反応するセンサーを開発するのはかなり難しい。ただ、これまでの研究で、がんに共通した臭い物質が数個わかってきましたので、おそらく5年後ぐらいには、がんの臭いセンサーが開発されると思います」(園田医師)

 

がん探知犬クラスのセンサー登場が待ち遠しい!

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