「先月、アメリカの睡眠財団が、年代ごとの理想的な睡眠時間を発表しました。睡眠の専門家や老年医学会、精神学会などが関わった、これまでにない大規模な調査によると、男女問わず26〜64歳の睡眠時間は7〜9時間が望ましいというのです」
こう語るのは、順天堂大学医学部教授の小林弘幸先生。ほかの世代では、就学児童(6〜13歳)にとって望ましいのは9〜11時間。思春期の小児(14〜17歳)で8〜9時間、青年(18〜25歳)で7〜9時間、65歳以上の高齢者が7〜8時間となっている。
「たしかに睡眠には、個人差があり、その質や時間の基準は、これまで明確に定められていませんでした。今回の発表で注目されるのは、グッスリ眠れたかどうかなどの睡眠の質ではなく、時間をクローズアップしていることです」
日本女性の平均睡眠時間は、年々短くなっており、6時間16分という調査結果(『日本人の睡眠2014』より)も出ている。
「そこで気がかりなのが、理想的な眠りの時間を得られないのは『重大な健康問題の兆候や症状である恐れがある』と警鐘を鳴らしていることです。睡眠時間が短くなったことを加齢のせいだと思っていたら、実は糖尿病や肝機能障害、腎臓疾患など症状として現れにくい病気の発症サインだということも」
また7時間に満たない場合は「健康を損ねる原因」との指摘もあり。睡眠不足により、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞などの生活習慣病やがん、さらにはうつ病になるリスクも上昇。血流も滞り、脳の働きも低下する。何をやっても能率が悪くなるばかりか、お肌のハリやつやも失われる。
「とはいえ、9時間以上の寝すぎも、高脂血症、高血糖、肥満などの生活習慣病のリスクが高まります。就寝中は、ホルモンの分泌を促したり、血流を整えたりと、体のメンテナンスをしてくれる副交感神経が活発に働きます。スマホや携帯電話が充電を必要とするように、人間も適度な時間の“充電”が欠かせないのです」