本誌が30〜50代の女性200人にインターネットでアンケートしたところ、トイレでスマホを「いつも使っている」人が10%、「ときどき使っている」人が12%。4〜5人に1人はトイレでスマホを使っているという結果になった。いまや「どこでもスマホ」の風潮はトイレにも及んでいる。しかし、衛生的には問題はないのだろうか?携帯電話が主流だった時代、米紙に次のような衝撃の記事が掲載された。
《米家庭医学会(AAFP)のジェフリー・ケイン会長は携帯電話に付着したバクテリアはインフルエンザや流行性結膜炎、下痢などの原因になると話す》《(調査のために無作為に選んだ)8台の携帯電話には約2,700〜4,200ユニットの大腸菌が付着していた》(’12年10月24日付『ウォール・ストリート・ジャーナル』)
ふだん使用している携帯電話に大量の大腸菌が付着していたというのだ!そこで、“スマホと細菌”問題について、医師で日本うんこ学会会長の石井洋介先生に話を聞いた。
「トイレでスマホ?それは汚いと思いますよ。もっとも、ふだんからよく手でさわるものは、スマホに限らず、多くの細菌が付着していて汚いといえます。何しろ、手にはお尻よりも菌がついていますからね。手は、皆さんが想像しているより清潔なものではありません」(石井先生・以下同)
私たちの全身には200万〜500万個の汗腺があり、汗とともに大量の菌も増殖しているという。そして手のひらは汗腺の集中する場所の1つで、どれだけ石けんでよく洗っても、時間がたてば、菌が増殖してしまうのだ。石井先生はこう続ける。
「実は手やスマホに付着している菌の“ほとんど”は、そこにすんでいるだけの無害な菌なのです。つまり、ふつうに生活している人なら、口に入ったりしても、病気になるようなものではないので、それほど神経質になる必要はありません。どうしても気になるという人は、アルコール消毒するといいと思います」
スマホを消毒したい場合は、アルコールを画面に直接噴射するのではなく、まず脱脂綿につけ、それで表面を軽く拭くだけでいいそう。アルコールが乾いていく間に、除菌されるので、完全に乾くことがポイントとなる。では、気にせずにトイレでスマホを使っていても大丈夫ということなのだろうか?
「さきほど、“ほとんど”は無害と言いましたが、もちろん感染すると危険な細菌やウイルスたちもいます。病原性大腸菌O-157やサルモネラ菌、ノロウイルスやロタウイルスなどです。これらは便や嘔吐物を介して感染します。家族など、身近に感染者がいる場合は、注意しなくてはいけません。感染者が、大便をしたり嘔吐したりしたときはトイレの除菌が必要になります。もちろんトイレでのスマホ使用も避けるべきでしょう」
感染症の原因となるウイルスはアルコールでは除菌できず、除菌効果がある次亜塩素酸洗剤での洗浄が必要になる。
「いまのような暑い時期に注意すべきなのは、O-157、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、ウエルシュ菌など、食中毒を引き起こす細菌類です。冬になると、ロタウイルスやノロウイルスが猛威を振るいます。新聞やテレビなどで、感染症が流行していると報道されたら、警戒してください。また、感染者が使用する可能性もある公衆トイレ内などでは、スマホ使用は避けたほうが賢明でしょう。万一、落としでもしたら気分も落ち込みますしね」