「市販薬は効き目が弱く、少しくらい間違って飲んでもたいしたことはないとタカをくくっている人もいます。それは大きな間違い。市販薬にも病気を治す『作用』がある半面、食事や飲み物などと体内で反応し、思いもよらない『副作用』を招くことがあります」
こう話すのは、東京薬科大学教授を経て、現在、日本くすり教育研究所代表理事を務める加藤哲太先生。そこで、いまの季節、服用することが多い市販の風邪薬を中心に加藤先生に解説してもらった。
「これから紹介する症例は必ず起きるというものではありません。ただいつこの副作用が起こるとも限りません。いままで間違った飲み方をしても大丈夫だったのは、運がよかっただけかもしれません。今後の自分の体を守るために知っておくことが大切です」(以下コメントは加藤先生)
■風邪薬はキャベツで効果がなくなる
「解熱鎮痛成分としてアセトアミノフェンが含まれている風邪薬は、キャベツに代表されるアブラナ科の野菜と相性が悪く、効き目が落ちてしまう場合があります」
キャベツや白菜、小松菜、ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜などに含まれるグルクロン酸という成分が、くせもの。
「この成分はアセトアミノフェンを代謝し、尿として体外に出してしまう働きがあります。このため、この成分を含む風邪薬の効きが悪くなるのです」
■酢と胃腸薬、解熱鎮痛薬で脳症になることも!
「市販の胃腸薬や解熱鎮痛薬には、アルミニウムを成分として含んでいるものが少なくありません。アルミニウムは長期に取り続けると、アルミニウム脳症と呼ばれる認知症に似た症状を起こすことがわかっています」
通常、市販薬に含まれるアルミニウムは99%以上、そのまま体外に排出されるため、心配はないが、酢といっしょに服用した場合は別だ。
「酢や梅干しに含まれるクエン酸にはアルミニウムを小腸で吸収されやすくする働きがあり、そのまま体内に残ってしまう危険性があるんです」
とくに腎臓が悪く、透析療法などを受けている人はアルミニウム脳症を起こす危険があるので、この飲み合わせは避けなくてはいけない。
■コーラで風邪薬を飲むと頭痛が起きる!
「風邪薬や解熱鎮痛薬の多くには眠気を抑えたり、効果を高めるために、カフェインという成分が配合されています。カフェインは取りすぎると、脳神経が過剰に刺激され、頭痛やめまい、動悸などの症状が出る。コーラやコーヒーといったカフェインを含む飲料といっしょに服用すると、この過剰摂取になる恐れがあるのです」
カフェイン飲料というと、コーヒーや紅茶が有名。しかし350mlのコーラにはカップ1杯のコーヒーより多い40~60mgのカフェインが添加されているという。
「ほかにもぜんそくの薬や酔い止め、眠気防止薬など、カフェイン飲料と飲み合わせると危険な薬はたくさんあります。薬は水で飲むこと」